日本は12年ぶりにウエールズから勝利を挙げた(C)産経新聞社 6月30日時点の世界ランキング13位のラグビー日本代表(以…

日本は12年ぶりにウエールズから勝利を挙げた(C)産経新聞社
6月30日時点の世界ランキング13位のラグビー日本代表(以下ジャパン)が同12位のウエールズに挑戦する、テストマッチが7月5日に北九州市のミクニスタジアムで行われ、ジャパンが24-19で勝利した。ジャパンのウエールズからの勝利は2013年6月の対戦以来2度目で、通算成績はジャパンの2勝13敗となった。
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今回のテストマッチの相手、ウエールズはこの一戦の前までテストマッチ17連敗と、協会史上最悪の状態。今年のシックスネーションズでも開幕から2連敗した時点で、HCを更迭し、新しいHCを迎えたものの、その後も3連敗と泥沼から這い上がれないままだ。
ジャパンとしては、昨秋から続く、ジャパンまたはそれに準ずるチームの連敗を止めるとともに、2027年のW杯予選プールで有意な組み合わせを得られるランキング10位以内に滑り込むためにも、チームに寄せられる様々な批判を跳ね返すという意味でも確実に勝っておきたい相手だ。ここ数試合で顕著に現れている「前半は競った展開で食い下がるが、後半にずるずると力の差を見せつけられ、結果として大差で負ける」という「悪癖」を払拭したい一戦でもあった。
しかし、試合はいきなりウエールズに先制パンチを見舞われる。自陣ゴール前のラインアウトから、ちょっとディフェンスをずらすムーブメントを仕掛けられて、あっさりとトライを奪われてしまったのだ。
おいおい、「前半戦の善戦」すらも見られないままに圧倒されてしまうのではないか、という最悪の状況が頭の中をよぎる。だが、この後すぐに、今度はマイボールラインアウトから、初キャップを得たWTB石田桔平が、SO李承信の内側でパスを受けてラインブレイクし、ラストパスを受けたFB松永拓朗がインゴールを陥れ、7-7と追いつく。
勢いに乗りたいジャパンだったが、ここから10分ほどは受けに回ってしまった。キッカケはWTBマロ・ツイタマのパントキック処理の失敗から。この後のスクラムから出たボールをSHキーン・ハーディーがインゴールに転がるキックを放つと、そのボールをWTBジョシュ・アダムスと追いかけたFB中楠一期のプレーが故意にボールを叩いたと判定され、ペナルティートライを奪われた上、中楠が10分間のシンビンを宣告されてしまった。直後のキックオフでは今度はSO李がダイレクトでタッチを割ってしまうミスキック。センタースクラムでの再開後は、プレッシャーをかけてくるジャパンスクラムの間隙をついて、No.8タウルべ・ファレタウの単独サイドアタックから次々とボールを運ばれ3本目のトライを奪われてしまう、1本目のトライを奪われた際に浮かんだ不安が、一層色濃く頭をもたげ始めた。
それでも、ジャパンは全く諦めていなかった。この後もハンドリングミスや、接点でのスチールなどで再三ウエールズにボールを渡してしまうのだが、スクラム、PK後のラインアウトで頑張ってウエールズに追加得点を許さなかったのだ。
特にスクラムが見事で、ターンオーバーこそなかったものの、全てのスクラムで優位に立ち、ウエールズFWのスタミナを奪うとともに、チーム全体の士気を低下させなかった。後半、ウエールズは明らかにスタミナ切れを起こしていたが、この時間帯に優位なスクラムを組み続けたことが効果的なボディーブローとなったようだ。
スクラムでスタミナを奪ったとはいえ、後半の後半になるまで細かいミスが頻発し、自軍に傾きかけている流れを完全に引き込むことができなかったのは大いに問題だ。まだまだ、個人のひらめきをフォローし切れるほどには「超速AS ONE」は成熟していない。李やファカタバ・アマトが瞬間的なひらめきでゲインしたものの、周りのプレーヤーがその動きについていけず、結果的にスチールされてボールを失うシーンが散見された。
チーム状態が最悪な上に、最高気温33℃、湿度68%という過酷な環境下でバテバテだったウエールズが相手であったが故に致命傷とはならなかったが、ランキング10位以内の強豪たちは、こうしたミスやスキをついて逆襲し着実に得点に結びつける技術と、ミスを取り戻そうと勢い込んで押してくるジャパンのスクラムを跳ね返す強さ、あるいはスクラムの力をうまくいなす技術を身につけている。この試合にしても、一歩間違えば、大敗していてもおかしくはない頻度でミスが出ていた。
試合は、後半19分に中楠がトライを奪って14-19と追撃態勢を整えると、24分には李がPGを決めて17-19。そして30分には敵トライライン前5メートルのラインアウトからモールを押し込み、最後はタイミングよく参加した途中出場のWTBハラトア・ヴァイレアがインゴールに雪崩れ込んで逆転、ゴールも決まって24-19。李はこの日4回のキックのチャンスを全て決めるスーパーブーツぶりを見せた。
そしてそのままノーサイド。「勝利は全てを癒す」という言葉を改めて実感した。とりあえず、第一戦はなかなかいい状態で勝ったが、ウエールズとは来週にもう1回、対戦することが決まっている。この試合で出た課題を一つでも解消し、「勢いだけではない」戦いで連勝を狙っていただき、胸を張って「ハイパフォーマンスユニオン」を名乗れるチームに仕上げていただきたい。
[文:江良与一]
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