(6日、第107回全国高校野球選手権広島大会1回戦 桜が丘3―1広島中等教育) 試合に出られない悔しさを晴らしてくれる…
(6日、第107回全国高校野球選手権広島大会1回戦 桜が丘3―1広島中等教育)
試合に出られない悔しさを晴らしてくれるのは、仲間たちだ。
中高一貫の広島中等教育のマネジャー秋田恵(けい)奈(な)さん(3年)は高校に上がるまで、軟式野球部で右翼手だった。見学した際に先輩から「初心者でもいいし、男女も関係ない」と誘われ、入部を決意。2014年の開校以来、初の女子選手となった。
だが、高校で硬式野球部に入ると、マネジャーに転向した。高校野球の大会に女子は出場できない。野球を始めるきっかけになった兄の恵人さん(20)が、広島商野球部でマネジャーとして貢献する姿が格好良く見えたのも理由だった。経験を生かしてチームを支えようと決めた。
恵人さんからノックの打ち方を教わり、マネジャーの仕事に励んだ。でも、選手からは「ありがとう」の一言もない。雑用係に思われているのを知り、溝ができた。
2年生の春、部活から足が遠のいた。
母の恵美さん(44)に相談すると、「中途半端なことをしないで、やめたら」。野球部をやめた後の自分の姿が想像できないことに気付かされた。
2週間後、「戻ってきてほしい」と仲間に促され復帰すると、選手たちが積極的に仕事を手伝ってくれた。選手らはミーティングで「ちゃんと感謝を伝えよう」と態度を反省した。松原慎太朗主将(3年)は「やってもらって当たり前という雰囲気があった」と話す。
そんな秋田さんを、松原主将は「チームで一番の負けず嫌い」と言う。秋田さんは「『自分が選手になれない分やってよ!』ってめっちゃ思います」と打ち明ける。一番楽しい瞬間は、選手たちが互いを刺激しながら、真剣に取り組む姿を見るときだ。
この日の桜が丘との1回戦。秋田さんは「つなぐバッティング!」「切り替えていこう」とベンチから鼓舞し続けた。2点差を埋められないまま3―1で惜敗。試合終了のサイレンが鳴ると、涙が止まらなかった。
恵美さんは「とにかく部活とメンバーが大好きな子。家でもずっと選手のメンタルのことなどを話していた」と振り返る。7月に入ってからは、どうすれば選手の緊張がほぐれるかをずっと考えていたという。
この日、兄の恵人さんも秋田さんから「来てほしい」と声をかけられ、応援に駆け付けた。「6年間よく続けたと、誇りに思います」とねぎらった。
試合後、秋田さんは「選手が今までで一番頑張ってくれて、うれしかった。6年間めっちゃ楽しかったです」と話した。「大学に入ったら、また野球やろうかな」。目を赤く腫らしながら、笑顔を見せた。(遠藤花)