(6日、第107回全国高校野球選手権福岡大会1回戦 朝倉光陽0―7福岡工=七回コールド) 0―3で迎えた三回、緊張した…
(6日、第107回全国高校野球選手権福岡大会1回戦 朝倉光陽0―7福岡工=七回コールド)
0―3で迎えた三回、緊張した面持ちで朝倉光陽の松沢隆人選手(3年)が打席に向かおうとした。すると、ファウルボールを拾ったり、ボールを審判に手渡したりするボールパーソンとしてベンチ脇に座っていた主将の合原(ごうばる)莉愛(りあ)さん(3年)が「行ってこい!」と明るく声を掛けた。
直後、松沢選手は直球をはじき返し、二塁打に。得点はならなかったが、松沢選手は試合後、「主将の声掛けが力になった」と話した。
合原さんは、昨夏から部史上初の女性主将を務める。小学1年で野球を始め、中学でもプレーした。入部当時、1年生4人のうち野球経験者は合原さんだけ。上級生の半数も、高校から野球を始めた。そのためか、試合ではミスが目立った。経験者として勝利に貢献したいが、かなわない。もどかしかった。「試合に出たい」との気持ちが強く、落ち込むこともあった。
当時の合原さんについて、松丸康隆監督(29)は「試合の前後で無口になったり、受け答えに身が入らなくなったりしていた」と振り返る。
新チーム発足時にこの代唯一の経験者であることから主将に選ばれた。明るい性格、野球にかける情熱も、決め手だった。
ただ、当時のチームは遅刻が目立ったり、監督に返事をしなかったり。そこで率先して行動した。朝練は必ず一番最初にグラウンドに出た。校庭の周辺や通学路のゴミ拾いをし、練習中は誰よりも大きい声を出した。すると、合原さんにならう部員が次第に増えていった。
プレーのコツなど助言を求められ、技術面でもチームから頼りにされているのがうれしかった。
この日は試合前のノッカーも務めた。「よっしゃ、行くぞー!」と声を張り上げ、チームを盛り上げた。すがすがしい気持ちで、自然と笑顔になった。
試合は七回コールド負け。試合後は涙が止まらなかった。笑顔を取り戻すと部員らに声を掛け、「主将」としての役割を果たした。松丸監督も、「部員たちと3年間ひたむきに向き合ってくれた。試合の結果は悔しいが、主将としてよく頑張ってくれたと思う」とねぎらった。
希望がかなえば、来年は大学生になる。それ以降も、何らかの形で野球とは関わり続けるつもりだ。(山本達洋)