(6日、第107回全国高校野球選手権鹿児島大会1回戦 鶴丸2―5甲南) 三回裏、2点を先取された場面で2死満塁のピンチ…

 (6日、第107回全国高校野球選手権鹿児島大会1回戦 鶴丸2―5甲南)

 三回裏、2点を先取された場面で2死満塁のピンチ。鶴丸のエース露重尚毅投手(3年)は、前の回に適時打を浴びた9番打者を相手に、落ち着いていた。「これ以上追加点はやれない」。独特の下手投げのフォームから、思い切って直球を投げた。一ゴロで打ち取り、この回を無得点に抑えると、マウンドで手をたたいて喜んだ。

 入学時は上手投げ投手。ベンチ入りは難しかったが、投手にこだわり続けた。2年生の時、指導者から長い手足を生かして、下手投げへの転向を勧められた。

 目標にしたのは、WBCでも活躍した元ロッテの渡辺俊介投手。渡辺投手のような緩急や高低差を使った投球術を目指したが、最初は苦労の連続。コントロールが定まらず、とても試合で投げられる状態でなかった。

 助けてくれたのが、駒走連音捕手(3年)らチームメートたち。練習に付き合い、課題を一緒に考えてくれた。「みんなに感謝したい」。最後の夏は、エースナンバーを手に入れた。

 相手の甲南はお互い県内の伝統校で、「甲鶴戦」と呼ばれるスポーツ交流戦もあるライバル校。今年4月に対戦し、露重投手も研究されていた。四回に3点目を失ったところで、後輩にマウンドを譲った。

 鶴丸も意地を見せ、一時は2点差まで追い上げたが、ゲームセット。試合後、露重投手に涙はなかった。「今からは勉強。大学でも下手投げに磨きを掛けたい」と話した。(井潟克弘)