(5日、第107回全国高校野球選手権大阪大会1回戦 布施4―3河南) 試合前のノックの時間。河南の野口諒太投手(3年)は…

(5日、第107回全国高校野球選手権大阪大会1回戦 布施4―3河南)

 試合前のノックの時間。河南の野口諒太投手(3年)はグラウンドを見渡し、深呼吸をした。

 「逃げずに強気で攻めよう。二度とない試合を楽しもう」

 1年生だった2年前は部員不足で連合チームでの出場だった。単独チームとなった2年生の時から、背番号1を背負ってきた。エースとしての使命感と自覚を持たなくてはいけない。そう思い、練習中も仲間に緩んだプレーがあれば、厳しい言葉をかけてきた。

 打撃でも主力。試合でよく三塁打を放ち、仲間から「ミスタースリーベース」と呼ばれてきた。

 この日、初回の1打席目。右中間への三塁打で出塁した後、先取点となる本塁を踏んだ。

 マウンドでは三回に3失点を喫したが、ベンチに戻ると「よっしゃ行こう!」と大きな声を出した。2点を追う八回の打席では再び三塁打を放ち、1点差に詰め寄る流れをつくった。

 仲間がくれる「良いボールだよー!」との声に支えられ、高校の公式戦で初めての完投。ただ、それが高校最後の試合となった。

 試合の後、こらえきれない涙が目にうっすらとたまった。もう少し長く、みんなと一緒に野球がしたかった。だけど、すぐに笑顔に変わった。「できることは全部やった。きょうは本当に楽しかった」と振り返った。仲間たちにも、「一緒にやれて本当に楽しかった」と伝えようと思う。(渡辺萌々香)