佐賀県内でただ一人の女子野球部員、唐津東の伊藤羽叶(わかな)さん(3年)が、5日の第107回全国高校野球選手権佐賀大会…

 佐賀県内でただ一人の女子野球部員、唐津東の伊藤羽叶(わかな)さん(3年)が、5日の第107回全国高校野球選手権佐賀大会開幕試合で始球式に登板した。

 1年生の時も夏の大会の始球式のマウンドに立った。球速はその時の98キロから94キロに落ち、「球速には納得いかない」と負けん気がのぞいたが、「最高でした」と笑顔がこぼれた。

 「男子と一緒によく頑張るね」と言われるたび、不思議な感覚を抱いてきた。「野球を始めた時からまわりは男子ばっかりだったので……」

 父が少年野球のコーチをしており、兄に続き小学1年生から白球を追った。兄がやめても、好きで面白いから続けられた。小学生では最速102キロを投げる速球派投手だった。

 唐津東中学2年で二塁手に転向、男女一緒にできる中体連の県内の地区大会では、殊勲打を放ち優勝した。この時、相手ベンチから応援していたのが、今、チームで二塁を守る米倉慧人選手(3年)だった。

 「まさか一緒にやることになるとは。(二塁の)捕球の姿勢が本当にきれい」と伊藤さんに一目置く。

 高校進学時には県外の女子野球の強豪校も考えたが、「中高一貫の唐津東で、ずっと一緒にやりたかった」。世戸明樹主将(3年)ら4人とは中学から6年目のつきあいだ。

 「中学では同じぐらいに(プレーを)やれたが、高校ではやっぱり体力差を感じた」。1年の終わりごろから打球の飛距離が男子に追いつかなくなった。低反発バットになり、打撃で苦労した。それでも、二塁の守備で併殺を成立させると充実感があった。「始めたからには、最後までやり通そう」と駆け抜けた。

 男子に限られる公式戦に出られなくても、昨夏の大会は、勝って初めて校歌を歌い感激した。

 進学予定で、看護師を目指して大学では野球から離れるつもりだ。小さいころから、米大リーグ・メッツの千賀滉大投手に憧れてきた。始球式はイメージした速球ではなかったが、「集大成と思って投げられました」。(森田博志)