7月5日に開幕する第107回全国高校野球選手権福岡大会(県高野連、朝日新聞社主催)には134校132チームが出場する。…

 7月5日に開幕する第107回全国高校野球選手権福岡大会(県高野連、朝日新聞社主催)には134校132チームが出場する。主将だが、試合には出られない。そんな悔しさを乗り越え、大会に臨む女性部員がいる。

 「よっしゃ、行くぞー」。朝倉光陽(福岡県朝倉市)のグラウンドに力強く響いた声の主は、合原(ごうばる)莉愛さん(3年)。昨夏の新チーム発足時から主将を務める。

 小学1年で野球を始め、中学でもプレーした。家からの近さや、仲良しの先輩がいたことなどが決め手となり、朝倉光陽に進学。部史上初の女性部員に。入学した年の福岡大会では試合前のノッカーを務めた。

 当時、1年生4人のうち野球経験者は合原さんだけ。2年生8人のうち4人、3年生4人のうち2人も高校から野球を始めた。そのためか、試合ではミスが目立った。経験者として勝利に貢献したいのに、かなわない。もどかしかった。「試合に出たい」。その気持ちが強くなりすぎて、落ち込むことも多かった。

 当時の合原さんについて、松丸康隆監督(29)は「試合の前後で無口になったり、受け答えに身が入らなくなったりしていた」と振り返る。

 3年生になると、この代唯一の経験者であることから主将に選ばれた。明るい性格、野球にかける情熱も、決め手だった。

 心境に変化が生まれたのはこの頃だった。引退までの時間がそう長くないことに気づき、自分を応援してくれる周囲への感謝も芽生えた。「落ち込んでいる時間が無駄」。気持ちを切り替えた。

 チームは発足当初、遅刻が目立ったり、監督に呼ばれても返事をしなかったり。雰囲気はよくなかった。

 そこで率先して行動した。朝練は必ず一番最初にグラウンドに出た。グラウンド周辺や通学路のゴミ拾いに取り組み、練習中は誰よりも大きい声を出すことを心がけた。合原さんにならうように、朝早く来たり、大声を上げたりして練習に励む部員が次第に増えていった。

 スライディングの仕方やボールの取り方など、プレーのコツを部員に伝えることも多い。助言を求められ、技術面でもチームから頼りにされているのがうれしい。

 主将として迎えた昨秋の県大会では1勝を挙げた。2014年の夏以来、10年ぶりの公式戦勝利だった。合原さんも、ファウルボールを拾ったり、ボールを審判に手渡したりするボールパーソンとしてベンチにいた。「試合に出たいという気持ちはもう全くなかった。絶対に勝てると信じて応援する気持ちしかなかった」

 副主将で同学年の山下結さん(3年)は「何事にも一生懸命。いるだけで、チームの雰囲気がよくなる。主将のためにも勝ちたい」と話す。

 朝倉光陽は6日に大牟田延命球場で福岡工との初戦を迎える。合原さんは試合前のノッカーを務め、ボールパーソンの役割を担う予定だ。チームの目標は「ベスト32」。まずは11年ぶりの夏の1勝のために、できることをやりきるつもりだ。(山本達洋)