レスター・シティのクレイグ・シェイクスピア監督が突然、解任された。 10月16日に行なわれたWBA戦を1-1で引き分け…

 レスター・シティのクレイグ・シェイクスピア監督が突然、解任された。

 10月16日に行なわれたWBA戦を1-1で引き分け、第8節終了時の成績は1勝4敗3分。勝ち点6で降格圏の18位に沈んだことで、タイのオーナー陣は監督解任に踏み切った。



電撃解任されたシェイクスピア前監督と岡崎慎司

「ここ数ヵ月の戦いぶりに一貫性がなかった。変化が必要と感じた」とアイヤワット・スリヴァッダナプラバ副会長は説明する。しかし、シーズン開幕からわずか2ヵ月のタイミングで解任に至った決断は、「時期尚早」と言わざるを得ないだろう。第8節までの対戦相手にはアーセナル(第1節/3-4)、マンチェスター・ユナイテッド(第3節/0-2)、チェルシー(第4節/1-2)、リバプール(第6節/2-3)といった強豪クラブが含まれていた。試合数にして半数である。

 しかも、新戦力がチームに融合するには相応の時間が必要であり、昨季までの主力だったMFダニー・ドリンクウォーターがチェルシーに移籍したという考慮すべき事情もあった。加えて、彼の代役として期待されたポルトガル代表MFアドリエン・シルヴァの登録申請が締め切り期限に14秒遅れ、移籍が破断になったという不手際も重なった。にもかかわらず、たった2ヵ月での解任である。シェイクスピアを擁護できる点は少なくない。

 ただしレスターが、ここまで手放しで褒められるようなパフォーマンスを見せていたわけではなかったのも事実だ。とりわけ疑問符がつくのは、ハダースフィールド(第5節/1-1)、ボーンマス(第7節/0-0)、WBA(第8節/1-1)の3試合。戦力的に同等、あるいは格下と見られるチームとの対戦で、レスターの戦いぶりは極めて凡庸だった。

 特にひどかったのが、解任の引き金となったWBA戦だ。指揮官が採用したのは、FWジェイミー・バーディーとFWケレチ・イヘアナチョを2トップに据えた4-4-2。前線から積極的にプレスをかける岡崎慎司がベンチに回ったこともあり、レスターの肝であるプレッシングサッカーは影を潜めた。

 解せなかったのは、イヘアナチョを入れた4-4-2のシステムで戦い方の狙いをどこに定めているのか、まったく見えてこなかった点である。ふたりのどちらかがプレスをかけることもなければ、両者のスピードを活かす攻撃があったわけでもない。この人選とシステムで綿密なトレーニングを積んでいたようには思えず、ゴールの匂いはまったくしてこなかった。

 その証拠に、高い決定力が売りのはずのイヘアナチョは、ペナルティエリア内でのボールタッチ数がゼロ。プレッシングサッカーの要である岡崎を先発から外してでも、イヘアナチョを起用した効果は見えなかった。

 とはいえ、繰り返しになるが、解任の決断は性急すぎた。

 おそらく副会長の実父であるヴィチャイ会長としては、クラブ史上最高額となる6000万ポンド(約90億円)の補強費を夏の市場で投下したのだから、現在の成績とパフォーマンスに納得がいかないのだろう。母国タイで免税店の経営から成り上がったというビジネス色の強いヴィチャイ会長にとっては、数字こそがすべてなのかもしれない。

 しかし、2年前のリーグ優勝自体が「奇跡」で、もともとは「プレミア残留」が目標であるはずのレスターのクラブ規模を考えれば、シーズン序盤で下位に沈むことは想定の範囲内であるべきだ。だからこそ、クラブOBのガリー・リネカーは解任劇に「愚行」と叫び、2年前までチームに在籍した元オーストラリア代表GKのマーク・シュウォーツァーも「シェイクスピアは選手たちに近い存在。対戦相手も強豪ばかりで、厳しすぎる決断」と異議を唱えているのだろう。

 要するに、身の丈にあったクラブ運営ができていないということだ。

 さて今後、気になるのは後任人事である。英紙『デイリー・テレグラフ』によると、”野心家”のヴィチャイ会長はカルロ・アンチェロッティ(前バイエルン・ミュンヘン)やロベルト・マンチーニ(現ゼニト)といったビッグネームの招聘に動く意向だという。そのほかでは、バーンリーのショーン・ダイク監督、ウェールズ代表のクリス・コールマン監督らの名前が挙がっている。

 もちろん、岡崎にとっても監督交代は大きな転機になるだろう。本稿執筆時で後任人事は進んでいないが、ひとつ占うとすれば、フィジカルプレーを好む英系監督よりも、戦術知識に長ける非英系監督のほうが相性はいいかもしれない。そして、間違いなく言えるのは、シェイクスピア監督の解任でレスターの一時代が終わり、その影響が少なからず岡崎にも及んでくるということだ。

 岡崎の獲得を決めたナイジェル・ピアソン前監督と、跡を引き継いだクラウディオ・ラニエリ前監督。シェイクスピアは、その両監督のもとで助監督を務めた。ピアソン前監督のもとでプレッシングサッカーの礎(いしずえ)を築いただけに、シェイクスピアの退団でこの流れにいったんピリオドが打たれる。後任監督の方針次第で新たなプレースタイルに着手する可能性があり、FWの定位置争いもゼロからの仕切り直しになるだろう。

 ただ岡崎本人は、今回の監督交代や新たなポジション争いも前向きに捉えるに違いない。WBA戦の試合後、つまり、シェイクスピア解任前の時点で次のように話していた。

「今はやっぱりレスターで結果を出すことが一番だと思う。『試合になぜ出られないのか?』ということは、あまり自分のなかでは考えずにやっている。その議論については、自分はもうあきらめたというか。出るときもあれば(出ないときもある)。だから、レスターも日本代表も、どちらもそんな感じで捉えています。

 やっぱり、サッカー人生を楽しみたいので。このレスターでのチャレンジを楽しみたい。実際(出場したリーグ戦の)6試合で3点獲れている。そういう意味では、試合に出られなかったと言っても、自分のプレーを示せば点を獲れる力はあると思っているので」

 次節のスウォンジー戦は、コーチのマイケル・アップルトンが暫定的に指揮を執る。プレミア在籍3季目の岡崎にとっても、ここから新たな局面に突入することになる。