全校生徒約80人の高校に、たった1人の野球部員がいる。青森県の野辺地高校の松舘侑希さん(2年)。六ケ所、七戸と連合チー…

 全校生徒約80人の高校に、たった1人の野球部員がいる。青森県の野辺地高校の松舘侑希さん(2年)。六ケ所、七戸と連合チームを組んで出場する夏の青森大会に向け、黙々と練習を重ねる。ポジションは投手。その球速は、連合チームでは異例の140キロに迫っている。

 部員1人だけのため、学校では佐藤康平監督と体づくりのトレーニングをしたり、投球練習をしたりしている。

 小学校1年生から野球を始めたが、中学卒業とともに野球もやめるつもりだった。クラブチームに所属していたが、出場機会に恵まれず、「やる気がなくなった」というのが理由だった。

 高校に入ると、小中の二つ上の先輩がいた。野球部の部員はその先輩1人だけだった。「どう?」と先輩に入部を促されても断り続けたが、練習してみると「悪くないなって思った」。もう1人1年生が入部し、昨年は3人で活動した。

 しかし、新たな春を迎え、先輩は卒業。同学年の部員は退部した。1人になり、佐藤監督から「続けるか」と聞かれると、「やっていけます」と答えた。

 一時はやる気をなくした野球だが、「先輩が守ってきた部を途絶えさせたくない」という気持ちに変わっていた。

 今、1人だけの部活動を終えた後、楽しみがある。1カ月ほど前から、トレーナーの兄・拓斗さん(22)と自宅で練習するようになった。拓斗さんは、強豪・青森山田の野球部出身。上半身と下半身の使い方や、投球時には胸の動きが大事なことを教わった。

 昨冬からウェートトレーニングに励んでいたことに加え、拓斗さんから指導を受けたことで、球速が大幅にアップした。175センチ、76キロの体から繰り出される直球は、この1カ月で120キロから130キロ台中盤にまで伸びた。練習で球を受ける佐藤監督も「本当に速くなった」と実感する。

 「来年には140キロを超えたい」。一度はやめようと思った野球の道。高校で改めて野球の楽しさを知り、今はこの先も続けようと思っている。(小田邦彦)