戸郷は今季2度目の抹消となかなか浮上できないでいる(C)産経新聞社 野球評論家の佐野慈紀氏が現在の野球界を独自の視点で考…

戸郷は今季2度目の抹消となかなか浮上できないでいる(C)産経新聞社

 野球評論家の佐野慈紀氏が現在の野球界を独自の視点で考察する「シゲキ的球論」。今回は今季2度目のファーム調整となった巨人・戸郷翔征の”再建論”を語った。

 戸郷は今月22日の西武戦(東京ドーム)で四死球を含む5回6安打3失点で6敗目を喫し、今季2度目の登録抹消が決まった。

【画像】近鉄で中継ぎとして活躍した佐野慈紀氏

 開幕投手を務めた戸郷が不振のままでは、今後のペナントレースの戦いにも影響を及ぼすとあって、浮上が期待されている。

 佐野氏はまず「セ・リーグの野球」の性質について「セの野球は『防御』から始まる。『1点も取られたくない』というところから始まっている。そうなるとどうしてもコントロール重視となる」と分析。

 巨人に限らず、セ6球団の基本的な戦い方として、パの野球に比べて、投手陣がより失点を許容できない雰囲気があるとする。

 その上で戸郷の強みが今は失われてしまっていると指摘する。

 「戸郷という投手はストライクゾーンの四隅に投げる投手ではない。テンポよく強い直球を投げ込む投手。それでフォークが生きる。だが、いまはその直球自体に勢いがなくなっています。やはり打者に聞くと、『勢いのある直球が1番打ちにくい』と言います」と佐野氏は話す。

 そんな本人の状態に加えて「捕手の甲斐選手のリードも関係してるかなと思います。いい選手ですが、リードはきわどいコースを要求するタイプ。大胆に投げさせるというのは少ない」とコメント。戸郷のリズム良く投げるピッチングスタイルに対応できず、良さをうまく引き出せていない可能性もあるとした。

 実際に開幕投手を務めた戸郷は当初、甲斐とバッテリーを組んでいたが、最近では、昨年から組んでいた大城卓三とのバッテリーへと変化していた。

 当然、佐野氏も戸郷のポテンシャルは高く評価する。2023年のWBCにも出場するなど、世界にもその力は認められている。 

 「戸郷選手の復活はチームには欠かせないピース。オールスター後に1軍に上がってくるぐらいの気持ちでやってほしい」とエールを送っていた。

【さの・しげき】

1968年4月30日生まれ。愛媛県出身。1991年に近鉄バファローズ(当時)に入団。卓越したコントロールを武器に中継ぎ投手の筆頭格として活躍。中継ぎ投手としては初の1億円プレーヤーとなる。近年は糖尿病の影響により右腕を切断。著書「右腕を失った野球人」では様々な思いをつづっている。

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