■二刀流でいこう! 【野球×漁業】 釜石商工(岩手)堀内駿汰さん 釜石商工野球部、堀内駿汰さん(3年)の朝は早い。 リア…

■二刀流でいこう! 【野球×漁業】 釜石商工(岩手)堀内駿汰さん

 釜石商工野球部、堀内駿汰さん(3年)の朝は早い。

 リアス海岸が続く岩手県釜石市。小さな湾の奥にある漁港から6月19日午前4時45分、長さ10メートルほどの漁船が堀内さんを乗せ、波穏やかな海面に滑り出した。

 操船するのは父、慎一郎さん(43)。母親の真美子さん(42)も同乗する。数分で、養殖したカキを沈めた場所に到着。ウィンチで引き上げたカゴを、堀内さんは手際よく淡々と開き、中のカキを取り出していった。

 週に4~5日は家業の漁業を手伝う堀内さん。早い日には朝3時半から海に出る。仕事が終われば7時には登校し、野球部の朝練に参加する。もちろん放課後も部活だ。

 さすがに疲れない?

 「つらくはないです。海の上で作業しているのが楽しくて。野球も大好きですし」。穏やかに、かみ締めるように語る。

 一番好きなのはまだ寒い3~4月ごろのワカメ収穫。引き上げた養殖ロープから、育ったワカメを鎌で刈り取る。

 「ロープを引っ張ってワカメをザクッと切って、また引っ張ってザクッ。リズムって言うか……。マジで楽しいです」

 真っ暗な寒い海上でその作業をくり返していると、周囲が次第に明るくなり、夜明けの太陽で赤く染まる。そんな海が大好きなのだという。

 幼い頃から父の船に乗るのが好きだった。海風が気持ちよかった。小3の時、父に漁に出るかと聞かれ、二つ返事で「出る」と答えた。以来、「漁師」歴は10年近い。

 野球を始めたのはもう少し早い小1の時。野球経験のある父に勧められ、地元チームに入った。

 現在のポジションは三塁手と投手。監督の似内拓也さんは「タフですね。揺れる船で漁に出ているからかもしれませんが、体の使い方がうまい。球のリリース時にグッと力が入り、投球も強いです」と評価する。

 海に育てられ、海に生きる堀内さんだが、卒業後は釜石市内で一般企業に就職したいという。

 「本当は継ぎたかったのですが、止められました」。海水温の上昇などの異変が激しく、将来を見通せないのが理由だ。自身、養殖ホタテが多く死ぬ光景を目の当たりにした。「残念ですが、近くで働いていれば休日は漁を手伝えるので」

 毎日のように漁と野球ができる高校の日々は幸せだ。「夏」を前に「あんまり早く時間が過ぎてほしくない」とつぶやいた。

 自分たちは、良い個性が集まった良いチームになったと思う。野球の楽しさは、そんな仲間と「一緒にひとつのことがやれる」ことという。

 花巻東(岩手県)で春の選抜大会8強入りを支えた投手、金野快さん(3年)は小学生時代にバッテリーを組んだ仲間。正月、帰省した金野さんと「夏は戦うべ」と語り合った。野球はそんな縁も運んでくれた。

 「野球も漁も、形は変わってもずっと続けていくんだと思います」(長野剛)