イタリア・ローマで開催されている「BNLイタリア国際」(5月8~15日/ATP1000/賞金総額374万8925ユーロ/クレーコート)は10日、男子シングルス2回戦が行われ、第6シードの錦織圭(日清食品/6位)がビクトル・トロイツキ(セ…

 イタリア・ローマで開催されている「BNLイタリア国際」(5月8~15日/ATP1000/賞金総額374万8925ユーロ/クレーコート)は10日、男子シングルス2回戦が行われ、第6シードの錦織圭(日清食品/6位)がビクトル・トロイツキ(セルビア/24位)を5-7 6-2 6-3で下し、3回戦に駒を進めた。  錦織の3回戦は12日になる予定で、相手は11日に行われるリシャール・ガスケ(フランス/12位)とアンドレアス・セッピ(イタリア/42位)の試合の勝者となる。錦織は、前週のマドリッドの3回戦でガスケと対戦してストレート勝ちを収め、6戦全敗という連敗記録に終止符を打ったばかりだ。    ◇   ◇   ◇  マドリッドで奮闘し、勝ち上がった選手にとって、その直後の、やはりマスターズ1000大会のイタリア国際というのは、精神的な疲労が出始める危険な場所だ。それでも、錦織のスタートぶり自体は、決して悪いものではなかった。トロイツキの最初のサービスゲームから、ストロークで厳しいコースを突いて相手にミスを強いる。結局サービスのよかったトロイツキがキープに成功したものの、かなりのプレッシャーをかけていた。  しかし対するトロイツキも、ストロークの調子が悪くなかった上に、サービスが冴えており、試合はお互いにサービスをキープし合う形で進む。そして5-6からの錦織のサービスゲームで、意を決して崩しにきたトロイツキのほうが、深いストロークで錦織にミスを強い、ブレークに成功。錦織のほうが押されているという印象はなかったにも関わらず、第1セットは結局、7-5でトロイツキのものとなった。  ところで錦織は、第1セットが終わってすぐのチェンジオーバーの際にメディカル・タイムアウトをとり、医療スタッフを呼んで薬を摂取している。第2セットに入ってからも最初の1、2ゲームでは、体調不良がその仕草や歩き方に出ているかに見えた。

 ところが、その外見的な兆候に反し、第2ゲームでの錦織は、フォアとバックのコンビネーション、ボレー、またドロップショットなどを使った頭脳的プレーで、ラリーを長引かせずして簡単にサービスをキープ。そして続くトロイツキのサービスゲームで、この試合初めてのブレークに成功した。  このゲームで、錦織はまずフォアハンドのストレートでエースを奪い、続くポイントでは、アウトとコールされたスマッシュがオーバーコールとなって、0-30とリードする。

 錦織はこの好機を逃さず、15-30から、まずはバックハンドのダウン・ザ・ライン、次にフォアハンドのクロスと、見事なストローク・エースを決めて、ついにブレークに成功。オーバーコールに憤怒し、やや集中力を乱したトロイツキのミスが早くなったことにも助けられ、錦織は4-2からふたたびブレークを果たし、6-2で第2セットをものにした  「第1セットのあと、よりコート内に踏み込むように努め、より攻撃的にいくことができたと思う。第1セットでは、そこが足りていなかった。決められるボールがたくさんあったのに、逃していた部分があったし、彼を端から端へと動かし続けるのに十分なだけ、僕はアグレッシブではなかった」と試合後、錦織は説明している。  「第2セットでは、バックハンドがよりよくなって、アングルやダウン・ザ・ラインにいいボールを打つことができ、おかげですべてがうまく機能することになった。特にバックで攻めていけたことが、ストローク戦で主導権を握るきっかけになったと思う」  反対に、第1セット終了時の治療と崩れた体調については、錦織は、そうハキハキとは説明しなかった。はにかみながら「たぶん先週の疲れもあって、まあ、いろいろとたいへんな部分があった」とだけ返し、棄権を考えるほどではなかったかと聞かれても「できる限り頑張ろうとは思ってやっていた」と言うにとどめた。  こうして突入した第3セットでも、錦織はほぼ常にストローク戦で優位に立ち、2-2からの第5ゲームで、早くもブレークに成功する。トロイツキも、第2セットでかなり落ちたファーストサービスの確率を戻していたが、よりサービスを読めるようになっていた錦織は、ファーストサービスに対してフォアハンドのリターンエースを決めて、15-40とブレークポイントを奪取。最後はラリーの末にフォアハンドのダウン・ザ・ラインを決めてブレークを果たし、世界6位である理由を、ここで証明して見せた。  5-3からの最終ゲームでも、トロイツキのファーストサービスをいい確率でリターンした錦織は、2本のフォアハンドのエースを奪った末に、最後はバックハンドでとらえたリターンを、ネットに出たトロイツキの足元に沈め、非常に印象的な形で試合を閉じる。

 途中、体調不良から危ういサインを見せた時間帯もあった錦織だが、かなりいいレベルのテニスを見せていたトロイツキから、数えきれないほどのストローク・エースを奪った試合でもあった。  特に第2セット以降のプレー内容には、満足感も覗かせた錦織だが、ここローマでの関門は、対戦相手と、やや遅めのコートだけではない。

 「ここ数年、マドリッドでは成績がそこそこいいので、連続で始まるローマでは、最初の数試合がきつくなる。バルセロナからの連戦ということもあり、毎年、ここ辺りで精神的疲労が出てくる、というのが正直なところ。テニス的にはいいものを出せているが、体調的にも、あまりよくはない。でも、このタフな試合を乗りきって勝ち、明日休みもあるため、少しはリカバリーできると思う」と錦織は言う。

 「2週連続でいい成績を出すということは、課題でもあり、今年ももちろん、そういう気持ちで臨んではいるので、今週はできる限り頑張り、なるべくいい成績を残して、フレンチ・オープンに臨みたい」  11日にガスケが勝てば、またガスケとの対戦になるが、と示唆されると、いつも直前まであえてドローを見ないようにしていると言う錦織は、「ガスケ? また?」と驚きながらも苦笑い。その先で当たり得るシード(ロジャー・フェデラー)について、名を言っていいかと聞かれると、「いや、やめましょう」と微笑みながら答えた。

(テニスマガジン/ライター◎木村かや子、構成◎編集部)