（27日、第107回全国高校野球選手権南北海道大会札幌地区2回戦 立命館慶祥10―0札幌南） 昨秋はエースナンバーだった…
（27日、第107回全国高校野球選手権南北海道大会札幌地区2回戦 立命館慶祥10―0札幌南）
昨秋はエースナンバーだった。札幌南の3番打者・尾形尚真選手（3年）が今季、野手に専念したのは、一打でチームを引っ張る打者になるためだ。一回裏２死、打席に立った。初回に守備の乱れもあり、2点を先制された。「三者凡退で終わりたくない」。流れを変えたかった。
先発した本間流郁投手（3年）の立ち上がりは悪くなかった。捕手も兼ねていた本間投手とは小学校時代のチームメートで、昨秋はバッテリーを組んだ仲。マウンドを守る「本間を助けたい」と思った。
4球目、勝負すると決めていた直球を狙い打ち、センター前にはじき返した。
野手に専念したことには、もう一つ理由がある。「夏を勝ち抜くには、飛び抜けた投手が必要。自分はそうなれない」。投手は本間選手に託し、自身は打力をつけるため、冬場はウェートトレーニングなどで鍛え抜いた。体重は高校入学時より、20キロ増えた。
9点を追う六回裏、1死一塁で迎えた打席。3球で追い込まれたが「ボールは見えていた」。打てると確信し、ファウルで2球粘った後の6球目。力強く振り抜いたが、打球はあとひと伸び足りず、右飛に終わった。
「最後はパワーが足りなかった」。試合後に止まらない涙が、打者・尾形選手の努力を物語っていた。（朽木誠一郎）
