サウサンプトンの吉田麻也が10月15日に行なわれたニューカッスル・ユナイテッドとのプレミアリーグ第8節で先発フル出…
サウサンプトンの吉田麻也が10月15日に行なわれたニューカッスル・ユナイテッドとのプレミアリーグ第8節で先発フル出場した。

キャプテンとしてディフェンスラインを統率する吉田麻也
吉田は4-4-2の右センターバック(CB)としてプレーし、CBのパートナーには夏の移籍志願で世間を騒がせたオランダ代表DFのフィルジル・ファン・ダイクが入った。もっとも、国際マッチウィーク明けの一戦であることから、長距離移動の疲れを考慮して吉田がベンチスタートにまわる可能性もあった。実際、9月5日に行なわれたサウジアラビアとのW杯アジア最終予選後の試合ではベンチスタート。ただ、今回の場合は吉田が親善試合・ハイチ戦を欠場しており、指揮官としてはコンディションの見極めが難しいところがあった。
日本代表戦からサウサンプトンの試合で先発するまでの過程について、吉田は次のように説明した。
「(10月10日の火曜日に行なわれたハイチ戦で)試合をやらずに帰ってきた。しかも(今回は)サウサンプトンの試合が日曜日に行なわれたのは大きかった。水曜日にイギリスに着いて、木曜日はリカバリー(回復メニュー)って言われたんですけど。でも、いつものように『いや、全然疲れていないので(チームと一緒に)練習します』って。アピールが成功したかなと。
気持ちの面でも、最終予選で追い込まれている状況とは全然違った。時差ボケについても、最終予選のときは『絶対に寝なきゃ』という強迫観念に駆られながらベッドに入るんで。(今回の場合は)『最悪、寝られなくてもいいや』という感じでベッドに入ると、意外と寝られるという。不思議なことが起きますね」
このサウサンプトンvs.ニューカッスル戦で、吉田はキャプテンを任された。
サウサンプトンではMFスティーブン・デイビスが主将を務めているが、彼がベンチスタートになったことで、代わりに吉田がキャプテンバンドを巻くことになった。日本代表DFがゲームキャプテンを務めるのは、リーグカップ2回戦のウォルバーハンプトン・ワンダラーズ戦(8月23日)に続いて今季2度目。キャプテン指名は、マウリシオ・ペジェグリーノ監督から高い信頼を寄せられていることの証(あかし)だろう。かくして吉田は、主将として先発メンバーに名を連ねることになった。
だが、肝心の試合でサウサンプトンは苦戦を強いられた。ニューカッスルの激しいプレスに苦しみ、なかなかボールを前方に運べない。しかも、サウサンプトンの陣形バランスが悪く、後方部からのビルドアップでもパスの出しどころが見つからなかった。「うまくいっていない感じはしました。ボールが前にいかないなって。前半からボールを後ろで回す回数が多くて。前に出しても後ろに返ってくる回数が多かった。なんかしっくりこなかった」と、吉田も振り返る。
どうにか流れを変えようと、吉田も左サイドを駆け上がってクロスを供給したり、前方にボールを持ち運んで大きくパスを展開してみたが、いずれも得点チャンスには結びつかなかった。
そんな歯車の噛み合わないサウサンプトンは、20分に先制ゴールを被弾する。後半開始直後に同点に追いついたが、わずか2分後にふたたび失点してリードを許すなど流れを掴めない。それでも、75分にPKで同点ゴールを奪って2-2の引き分けに持ち込んだが、「どうにかこうにか引き分けている感じ……。簡単に失点してしまっているし、よくないなと思います」と、吉田も肩を落としていた。
この試合で強く印象に残ったのは、主将として苦境を打破しようとする吉田の姿だった。
それは、サウサンプトンがPKで同点に追いついた直後の場面。同点ゴールにチームメイトが沸くなか、吉田はその輪に加わらず、テクニカルエリアにいるペジェグリーノ監督のもとにひとり走り寄って指示を仰いだ。指揮官と会話を交わして素早くピッチに戻ると、自陣に帰ってきた味方たちに伝え、これからどう動いていくかの意思統一を図っていた。
主将を任されたことについて、本人は「在籍年数の序列でしょ」と笑う。しかし、サウサンプトンで在籍6季目を迎え、チームを引っ張っていこうとする意識はさらに高まっているという。29歳になった8月24日の誕生日には、クラブとの契約を3年延長したことが発表された。
「立場やポジション、立ち位置、年齢もどんどん変わってきている。日本代表でもそうですけど、そういう立ち位置になってきているのは自覚しています。勝ちを手繰り寄せられるチームになりたいし、自分自身もそういう選手になりたい。もうワンステップ、ツーステップと上がっていければ」
サウサンプトンは、直近3試合で2敗1分と未勝利。吉田は「勝ちたい」と語気を強め、自身の立ち位置については「来週(の出番)はわからないという状況が続く。だからこそ、この試合で結果を出したかった」と危機感を感じている。
次節はホームで行なわれるWBA戦。主将を任せるなどペジェグリーノ監督は吉田を高く評価しているとはいえ、オランダ代表のファン・ダイクやDFヴェスレイ・フートとのポジション争いは熾烈を極めている。もちろん、チームとして何よりも勝利がほしい。
吉田、そしてサウサンプトンは、次節で勝ち点3を手繰り寄せることができるか。