張本はダブルスで見事優勝に輝いた(C)Getty Images 先週、リュブリャナ(スロベニア)で行われたWTTスターコ…

張本はダブルスで見事優勝に輝いた(C)Getty Images

 先週、リュブリャナ(スロベニア)で行われたWTTスターコンタンダーの女子シングルスで、世界ランキング6位の張本美和が、中国の次世代を担う若手、20歳の陳熠に準々決勝で2-3の大接戦で敗れた。

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 まだ17歳の高校生ながら、今や日本のエースとなった張本にとって陳熠は、3つ上ながら世界ランキング20位の格下。そして中国には23歳以下で張本に敵う選手は見当たらない。これは近い将来、張本が世界の王座につき、それが10年近くも続く可能性を意味する。張本が中国にとってどれほどの脅威か分かるだろう。何としても張本の勢いを止めたいという陳熠の気迫が伝わってくる。

 張本は序盤から得意のバックハンドで左右に打ち分けるが、180センチでリーチの長い陳熠はことごとくブロックで対応、決まるはずのボールが決まらない。こういう場合、ミドル、つまりフォアハンドとバックハンドの境目となる右肩のコースを狙うのが定石だが、そのボールに対しても陳熠は「待ってました」とばかりにフォアハンドで狙い打って来た。明らかに対策をしてきている。張本は、ときには卓球台の角よりも外側のコース(サイドラインを横切るコース)まで狙う厳しいボールで得点を奪う。左右ばかりではなく、前後もズレると台に入らない超絶コントロールが必要なコースだ。それだけにミスも出る。

 そうした危険なコースを狙わなけらばならないほど陳熠のブロックは固かった。

 張本はゲームカウント1-2の劣勢からなんとか2-2と追いついたが、最後は8-11と陳熠に金星を献上し、今後に課題を残した。

 その陳熠を準決勝でこれまた大激戦で破ったのが世界ランキング26位の23歳、長崎美柚だ。長崎は回転が分かりずらいサービスで陳熠を翻弄。さらに、ブロックが得意な陳熠に対してあえて長いツッツキ(下回転)を送って先に攻撃をさせ、わずかに甘くなったボールを狙い打つプレーで仕留めた。

 長崎は陳熠の前に何卓佳(同21位)、韓菲兒と2人の中国選手を破っており、3連破したことになる。決勝ではダブルスのパートナーでもある木原美悠(同25位)を破って優勝。国際大会の優勝から遠ざかっていた長崎にとって嬉しい復活の大会となった。なお、木原も石洵瑶(同16位)、王暁彤(同43位)と2人の中国選手、そして中国からマカオに帰化した元世界ランキング2位の朱雨玲を倒しての決勝進出だった。

 一方、陳熠に敗れた張本は、大藤沙月(同8位、21歳)と組んだ女子ダブルスでは、陳熠/韓菲兒、銭天一/石洵瑶と中国ペアを連破、決勝で韓国ペアを破って見事優勝に輝いた。若手が中心だったとはいえ多くの中国選手が出場した大会でのこの成績は、次代の日本女子の優位を示すものである。卓球ニッポンの復活は近い。

[文:伊藤条太(卓球コラムニスト)]

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