ブンデスリーガで声価を高め、複数の有力クラブから誘いを受けるレベルにまで成長した堂安。(C)Getty Imagesドル…

ブンデスリーガで声価を高め、複数の有力クラブから誘いを受けるレベルにまで成長した堂安。(C)Getty Images
ドルトムントやバイエルンが堂安獲得に関心か
ヨーロッパは2024-25シーズンが終わり、各クラブの来シーズンに向けた陣容整理と補強は加速している。当然ながらクラブ側はシーズン中から様々な事態を想定して準備を重ね、水面下で交渉を進めている。
契約書に実際のサインが交わされるその瞬間まで何が起こるかわからないのがサッカー界の常だが、移籍の信ぴょう性に関して毎日のようにメディアを賑わすこの時期は、ファンにとってもドキドキワクワクの時期と言えよう。
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そんな時期にあって、ここ数か月、ドイツ・メディアに頻繁に名前が上がっている日本人が堂安律だ。24-25シーズンを5位でフィニッシュしたフライブルクで絶対的地位を確立した27歳は、ブンデスリーガで自身初となる2桁ゴールをマーク。さらに攻守両面でハイクオリティなプレーをコンスタントに披露して声価を高めた。ファンはもちろん、メディアからも高い評価をされているだけに、複数の興味を持つクラブが出てくるのは必然であった。
最初に手を挙げたのはフランクフルトだった。ブンデスリーガ最終節でフライブルクに3-1と勝利し、クラブ史上2度目となるチャンピオンズ・リーグ(CL)出場権を獲得した名門は、過去に高原直泰、乾貴士、鎌田大地、長谷部誠が所属するなど日本人にとっても馴染み深い。
現在、U-21ドイツ代表のアンスガー・クナウフらが担当している右サイドのクオリティーは決して悪くはない。ただ、来シーズンをCLで戦い、リーグでも上位進出を狙うためには、もうワンランク上の選手が必要になる。マルクス・クレシュSDは早期から補強ポイントとしてテコ入れに動いていたことからも、彼らが堂安獲得をいかに重視しているかがよくわかる。
さらにドルトムントも堂安獲得の可能性があるとして世間を賑わせた。
オフェンシブなサイドのポジションにカリム・アディエミ、ジェイミー・ギテンスら資質高い若手が揃っているものの、守備面で一瞬たりとも気持ちを切らさずに、インテンシィ高くチームを助けられる選手となると見当たらないのが現状だ。
昨シーズン途中に就任したニコ・コバチ監督は、規律正しく、ハードワークを率先できる選手を好む。安定感に欠けるシーズンが続いているだけに、攻守の貢献度が高く、一定水準の計算できる選手として堂安がリストアップされるのは理解できる話だ。
また、ここにきて、絶対王者バイエルンも興味を示しているというニュースは出てきている。昨シーズンのブンデスリーガでMVP級の活躍を見せたマイケル・オリセが健在のチームだが、今オフはレロイ・サネがガラタサライへ移籍。セルジ・ニャブリやキングスレイ・コマンらは安定してパフォーマンスを披露できていないため、やはりサイドを主戦とする堂安は補強ポイントと合致する。
今夏の移籍市場では、ドイツ代表MFフロリアン・ヴィルツ(リバプールに移籍)、スペイン代表ニコ・ウィリアムズ、フランス代表ブラッドリー・バルコラらワールドクラスの名前が巷を賑わしてきた。彼らと比較すると、オフェンス時の破壊力では分が悪いかもしれないが、柔軟性、総合力といったところでは堂安も負けてはいない。また、ウイングバックとして3バックシステムにも対応できるマルチ性も魅力となる。
信ぴょう性はさておき、堂安は有力クラブの補強候補に名前が挙がってくるほどのパフォーマンスをブンデスリーガで見せている。それが各クラブ首脳陣の声価を高めているのも紛れもない事実だ。

日本代表のレギュラーでもある堂安。1年後に控えるW杯に向けて求められるものは何か。(C)Getty Images
W杯を見越した“現状維持”のメリットも大きいが…
では、堂安にとって最適な決断とは何だろう? 誰もが知っているように、来夏にはカナダ、メキシコ、アメリカでのワールドカップ(W杯)が開催される。22年のカタールW杯ではグループステージでドイツとスペインを相手にゴールを決め、センセーショナルなアピールをした堂安には、今大会も日本の重要な戦力としての活躍が期待される。
フライブルクは24-25シーズンに、直近4年で3度目となるヨーロッパリーグ出場を決めている。23-24シーズンには決勝トーナメント1回戦でプレミアリーグの古豪ウェストハムを撃破。市場価値総額でウェストハムの4億4600万ユーロと比較して、フライブルクのそれは半分以下の1億8900万ユーロと大きな開きがあったが、試合ではその差を感じさせないチームとしての完成度を見せていた。
そんな大舞台での試合後に堂安が語っていた点は、いまの成長に繋がるものだった
「セカンドボールへの対応は、監督がすごく口酸っぱく言っている。特にプレミアリーグクラブだとやっぱりフォワードに良い選手がいる。何の意図もないボールから起点を作られて、チャンスを作られている場面がグループステージでもあった。だからリスク管理だったり、中盤の選手が下がるというのを意識しました」
サッカーにおけるチーム力とは、個々の能力をただ足し算されたものではない。互いの良さを引き出し、相手の良さを消すための駆け引きと繋がりの中で、自らの力を何倍にも広げ、相手の特徴をギュッと抑え込むこともできる。ピッチ上のその術を知っている選手がいるかいないかが、試合の流れにもたらす影響は計り知れない。
フライブルクにおける堂安のステータスは極めて高い。「僕の言葉を、みんなが尊重して聞いてくれる」と本人も口にしている通りだ。ゆえにワールドカップのみを考えれば、主力として活躍できるクラブで充実したシーズンを過ごし、心身ともに万全のコンディションで臨めるメリットは大きい。
ただ、堂安がそれをよしとするか。彼はハングリー精神にあふれ、常に自身の成長を考えている選手だ。足を止めることは考え難い。
その意識の高さが現れる時があった。24-25シーズンの第33節でフライブルクはキールに勝利し、5位以上を確定させた。当然ながら試合後のチームはお祝いムード一色となった。その喜びはわかる。ただ、堂安はすぐ次へと気持ちを切り替えていた。まだ1試合残っている。CL出場のチャンスがあるんだ、と。
シーズン中には、そんな上昇志向を感じさせるコメントをよく残していた。
「上を目指すならこのままじゃダメ。フライブルクがこの2、3年で見せたパフォーマンスを考えると、やっぱりもっとステップアップしなきゃいけない。もちろん、3、4年前のフライブルクならこれでハッピーでいいかもしれない。けど、自分がいるこの3年間でさえ、成長を感じるクラブの中で、自分の中では満足しちゃいけないと思っています」
第21節のハイデンハイムとのホームゲームを1-0で勝利した後に、鋭い視線とともにそう語っていた。そうした言動からも堂安は自分をもっと追い込み、己の限界値をさらに引き上げる戦いを常に渇望しているはずである。
もう時が来たのかもしれない。さらなる飛躍のため、新しい環境に身を置く時が。「うまくいかなかったらどうしよう?」という不安は、堂安の辞書にはない。全ての障害は自力で排除すればいい。
[取材・文: 中野吉之伴 Text by Kichinosuke Nakano]
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