赤、黄、緑……。音ではなく、光で陸上競技の合図を出す「スタートランプ」の普及が進んでいる。聴覚に障害があるアスリート向…
赤、黄、緑……。音ではなく、光で陸上競技の合図を出す「スタートランプ」の普及が進んでいる。聴覚に障害があるアスリート向けの機器で、11月に日本初開催を控える国際大会「デフリンピック」でも使われる予定だ。住民にも身近に感じてもらおうと、21日、仙台大学(宮城県柴田町)で体験会があった。
スタートランプは、陸上競技のスタートライン付近に置く手のひらサイズの機器。「オン・ユア・マーク(位置について)」で赤、「セット(用意)」で黄色、「ゴー(スタート)」で緑色に光る。
仙台大の陸上競技部ではデフ(耳が聞こえない、聞こえにくい)の選手が7人活躍しており、デフリンピックには男子100メートルで2連覇を狙う職員の佐々木琢磨選手(31)のほか、生徒4人が出場予定だ。
体験会は陸上競技部の学生らと柴田町手話サークルが主催。5人が講師を務め、集まった地域住民ら40人ほどにスタートランプの特徴を説明し、スタートダッシュの見本を見せながら実際に体験してもらった。参加した町内の佐藤凛和さん(5)は「音よりも簡単だった」と笑顔で話した。
スタートランプの正式名称は「光刺激スタート発信装置」。東京都立のろう学校陸上部顧問の竹見昌久さんが開発した。
スタートの合図がピストルと審判の声だった頃、聴覚障害のある女子生徒が、耳が聞こえる選手も出場する試合に臨んだ際、周りを見て走り出し、出遅れた。試合後、彼女の悔し涙を見て、どんなに努力しても越えられない壁をなくしてあげたいと思ったことが、開発のきっかけだという。
「聞こえる人だけができるスポーツはそもそも公平じゃない。スタートランプの存在で、聴覚障害者にはスポーツでも様々なハンディキャップがあるということを広めたい」と竹見さん。
講師を務めた佐々木選手はスタートランプを導入したことで「スタートがしやすくなった」という。「デフリンピックやデフの選手たちの存在についてもっと知り、興味をもってもらいたい」と話した。(阿部育子)