21日から神奈川県の平塚市で全日本大学代表候補合宿がスタートしており、今年も取材しています。大学生にとって大学日本代表入…

21日から神奈川県の平塚市で全日本大学代表候補合宿がスタートしており、今年も取材しています。大学生にとって大学日本代表入りはドラフトの順位に直結するぐらい大事です。参加選手のほとんどが世代上位に入る選手たち。合宿では紅白戦が行われますが、12球団のほとんどのスカウトが視察しています。

 リーグ戦、大学選手権のアピールも大事ですが、候補合宿の内容がその世代の立ち位置を決めます。毎年、レベルが高い大学日本代表ですが、その中でも最もレベルが高いと呼ばれる23年の大学日本代表について振り返っていきます。

大学生投手の高速化に拍手をかけた投手陣から新人王が誕生

 この世代は26名中、3年生以下がわずか5名しかいない4年生中心のチームでした。この26名中、計20名(4年生15名、3年生5名)がドラフト指名され、ドラフト1位は4年生7名、3年生が3名と計10名がドラフト1位指名されるという大学野球史上最強といってもいいチームでした。

 現在の大学野球界は「投手の高速化」が進み、150キロオーバーが当たり前になってきましたが、それに拍車をかけた世代だったと思います。

 大学日本代表で2トップと呼ばれたのは細野 晴希(東亜学園-東洋大-日本ハム)、常廣 羽也斗(大分舞鶴-青山学院大-広島)の両投手でした。細野投手は巧みな牽制技術と常時150キロ前半の速球と曲がりの大きいカーブで翻弄するパワー型の左腕として活躍し、常廣投手は脱力した投球フォームから常時150キロ台の速球とカーブ、フォークで勝負しており、明らかに同世代でも抜けていました。

 そんな中、代表に選ばれてから凄みが増したのは下村 海翔(九州国際大付-青山学院大-阪神)、武内 夏暉(八幡南-国学院大-西武)の両投手。下村投手は最終学年の6月〜9月にかけての成長が凄まじく、常時140キロ後半の速球に加えて、140キロ近いカットボールの精度が大きく進化し、同僚の常廣投手とは違う個性がありました。

 武内投手は候補合宿や代表に選ばれた時は常時140キロ中盤〜後半ぐらいで、細野投手と比べるとそこまでボールは速くありませんが、制球力が高く、試合が作れるタイプでした。代表を終えてからの進化が凄まじく、高校日本代表との試合で自己最速の153キロを計測。4年秋のリーグ戦でも最速は150キロを何度も記録しており、それでも制球力は抜群と、最も内容が良い投手になっていました。当時、世代NO.1左腕と呼ばれた細野投手は制球力に不安があり、4年秋は調子を落としている中で、安定した投球を続けた武内投手は4年秋に最優秀防御率を受賞し、一気に評価を逆転させました。最終学年の内容はプロでも変わらず、1年目から10勝を記録し、新人王を受賞しました。2年目は出遅れましたがここまで2勝を記録しており、更に勝ち星を積み重ねることができるか注目です。

 細野投手は今年、プロ初勝利。通算32.1回を投げ、29奪三振とパワーピッチャーとして能力を発揮しています。下村投手はトミー・ジョン手術で出遅れ一軍未登板。常廣投手は昨年わずか2試合で、今年3月にはトップチーム入りするなど期待は大きいですが、まだ一軍で活躍できていません。当時の2人の期待からすれば、かなり厳しいスタートですが、いずれは一軍での活躍が期待できる投手だと思います。

 この4人に負けじとパワーピッチングで印象を残したのが、岩井 俊介投手(京都翔英-名城大-ソフトバンク)です。大学日本代表候補に入った投手たちはボールの回転数を測定しますが、ストレートの回転数2780は全投手の中でも1位。常時150キロ中盤の速球、ナックルカーブは強烈な威力がありました。プロではここまで通算13試合登板ですが、いずれは中継ぎの柱になる投手だと思います。古謝 樹(湘南学院-桐蔭横浜大-楽天)は武内、細野の両左腕に次ぐ内容を残していました。常時140キロ後半の速球をコントロールよく投げ分け、変化球も多彩で、打者に勝負できていました。プロ入り後も1年目から5勝を記録し、通算7勝をマークしています。他の投手たちも潜在能力が高く、これから一軍での活躍が期待できます。

3年生野手から3人のドラ1が誕生!西武2位スラッガーが即戦力で活躍

指名を受けた渡部(大商大-西武)

野手では4年生以上に3年生野手がインパクトを残していました。2年生の時から代表入りしていた宗山 塁内野手(広陵-明治大-楽天)は攻守に安定していました。遊撃守備は基礎動作がしっかりしており、安定してアウトを重ね、打撃では器用に広角に打ち分けており、計算が立つショートでした。大学4年は怪我もあって代表入りは逃しましたが、4年秋に進化した姿を見せ、即戦力でも活躍できる予感がしました。5球団の競合の末、60試合に出場して、57安打を記録しています。守備では8失策を喫していますが、154補殺はパ・リーグトップで、即戦力にふさわしい活躍を見せています。


 西川 史礁外野手(龍谷大平安-青山学院大-ロッテ)は3年春にリーグMVPを記録し、大学選手権でも本塁打を放ち、勢いに乗ったまま合宿に臨みました。古謝投手から打った瞬間、本塁打と確信できる当たりを放ち、その一発が評価されて、そのまま代表入り。さらに主軸を打つまでに評価されました。佐々木 泰内野手(県岐阜商-青山学院大-広島)は身体能力が高く、パワフルな打撃と強肩が光る三塁守備を見せていました。荒削りながらスラッガーとしての素質を見せていました。

 渡部 聖弥外野手(広陵ー大阪商業大-西武)はメンタル的なブレが少なく、落ち着いて打席に入っていて、的確にミートできる打撃技術の高さは際立っていました。その後、渡部選手は最終学年となった昨年も大学代表の主軸として活躍しますが、簡単には打ち取れない凄みを発揮していました。ドラフト2位となりましたが、34試合で136打数45安打、4本塁打、17打点、打率.331、OPS.840と同級生3人どころか、当時の大学日本代表の野手の中では最も打撃成績が良い選手です。怪我で離脱していますが、先日、二軍戦で復帰しました。7月以降は再び一軍の戦力として活躍してほしいと思っています。

 23年の大学代表の選手たちは当時のドラフトの主役となりましたが、今年の大学日本代表候補合宿の内容を見ても、今年も大学生が主役になりそうなパフォーマンスを見せています。今年はどんな選手が選ばれるのか楽しみです。