報復死球に顔をしかめ、苦悶する大谷。(C)Getty Images ライバルとしての因縁が深まる4連戦となった。現地時間…

報復死球に顔をしかめ、苦悶する大谷。(C)Getty Images
ライバルとしての因縁が深まる4連戦となった。現地時間6月16日から始まったドジャースとパドレスのそれだ。
3勝1敗でドジャースが勝ち越した今シリーズは終始緊張感が漂う内容となった。というのも、以前から何かといがみ合ってきた両軍ベンチが再び衝突する“報復合戦”が起きたからである。
【動画】思わず絶叫!大谷翔平が右太もも付近に死球を受けたシーン
とりわけ波紋を呼んだのは、両チームの主力に対する危険な死球のやり合いだ。カード最終戦となった6月19日(現地時間)の一戦では、パドレスの9回表の攻撃の際に、ドジャースの右腕ジャック・リトルが相手主砲フェルナンド・タティスJr.に死球を投じると、両軍ベンチから選手たちが飛び出す騒動が勃発。直接対峙したデーブ・ロバーツ監督とマイク・シルト監督がそれぞれ退場処分を命じられる事態となった。
さらに直後の9回裏の局面では、大谷翔平がカウント0-3から相手守護神のロベルト・スアレスから右肩付近に死球を受ける。この明らかな“報復行為”には球場全体もエキサイト。当てられた本人が「大丈夫」とジェスチャーを送ったことで大乱闘には至らなかったが、ベンチ同士の睨みあいは両チームの関係性の悪さを物語った。
シリーズを通して続いた“報復”の応酬。当然ながら受ける側にとってみれば、怪我のリスクもあり、たまったものではない。しかし、「向こうもやったらこっちもやる」という、ある種の喧嘩両成敗的なやり方は、米球界で長く培われてきた不文律によって続いている。
ともすれば、現代野球にそぐわないとも言える“不文律”。無論、今回の騒動にはSNS上で「危険だ」「いい加減にこんなくだらない伝統はやめるべき」「うんざりする」といったファンの声が目立ったのだが、米球界の酸いも甘いも知る識者たちは好意的に捉えている。
かつてレイズやエンゼルスなどを指揮した智将ジョー・マッドンは、米野球専門YouTubeチャンネル『Foul Territory』において「ああいうことが起きるのは自分の経験上、“当然のタイミング”で起きるんだ」と説明。その上で「『狙ってくれ』とか『あいつにぶつけろ』と投手に頼む時は本当に慎重にならないといけない。適任の選手がいるんだ」と実情を告白しつつ、持論を続けている。
「もしも、自分のチームが攻撃されていると感じたら、やり返す必要はある。そういうことをとことん嫌う監督もいるがね。でも、私は誰が何を言おうと気にしないし、今の野球界で何が語られているかなんて関係ないと考えている。必要な時にはやるべきなんだ。もちろん、誰かの頭を狙うような投球は絶対にダメだ。太もも付近を狙うのがプロのやり方だ」
一方で百戦錬磨のマッドン氏は、報復を「仕方ない」とする不文律を受け入れない時代の変化も痛感している。
「今の時代、とくに野球界ではこういうやり方は受け入れられなくなっている。いろんなことが検証される時代だからね。両チームの選手が肩を並べて談笑してるなんてシーンは当たり前にある。でも、私はそういうことが試合から感情や情熱を奪っているんだとも思う。技術が介入すればするほど、感情ってものは薄れていく。正直に言って、批判的な傾向が強まっている今の球界の在り方は好きじゃないよ」
是非が問われて久しい球界の暗黙のルール。奇しくも注目のライバル対決で浮かび上がったその在り方は、議論の余地がありそうだ。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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