自軍ベンチに向けて「来るな」とサインを送った大谷。(C)Getty Images ドジャースとパドレスによる“大荒れ模様…

自軍ベンチに向けて「来るな」とサインを送った大谷。(C)Getty Images

 ドジャースとパドレスによる“大荒れ模様”の4連戦で異彩を放ったのは二刀流スターだった。

 ドジャースの本拠地で行われたナショナル・リーグ西地区の上位対決は、互いの意地が衝突。次第に想いがエスカレートして4連戦を通して合計8個の死球が飛び出す波乱の展開となった。

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 一種の仇討ち合戦の様相も呈し、両軍の“報復”も目立ったカードにあって、ドジャースの主力である大谷翔平も「標的」となった。しかし、彼は痛みに耐える苦悶の表情こそ浮かべたが、荒ぶる素振りは微塵も見せず、むしろ最後の最後まで毅然と振る舞った。

 とりわけ脚光を浴びたのは、現地時間6月19日の4戦目での一幕だ。3点ビハインドの9回裏の攻撃の際に、大谷は、相手守護神のロベルト・スアレスから右肩付近に“報復”と取れる死球を受けた。100マイル(約160.9キロ)の剛速球が利き腕の右肩付近に直撃したのだ。

 もっとも、パドレス側にとっては腹に据えかねる想いがあったのかもしれない。というのも、直前の9回表にドジャースのジャック・リトルがフェルナンド・タティスJr.の左手にボールをぶつけ、それが引き金となって乱闘が勃発。激しくいがみ合った両軍の監督が退場処分となる事態となっていた。

 やられたんだからやり返す――。そうした相手の意図を汲んだのだろう。剛速球を当てられた痛みをこらえながら、今にもマウンドに飛び出さんとする自軍ベンチに目を向けた大谷は左手で「大丈夫だから」と言わんばかりのジェスチャーを送ったのだ。これを見たドジャースナインは制止し、両軍は衝突せずに事なきを得た。

 大乱闘に発展し兼ねない事態をいさめた大谷の“神行動”には、米球界の不文律を熟知する元スターも舌を巻いた。ドジャースの地元放送局『Sports Net LA』で解説を務めるMLB通算317発の球団OBのエイドリアン・ゴンザレス氏は「ああいう場面では当然ながら感情が昂るものなんだ」と持論を展開しつつ、こう続けた。

「チームに『大丈夫だ』と伝えた彼の対応は品格があった。あの場面では他の誰も同じ対応はできなかったと思う。右肩付近は彼の利き腕でもある。普通なら絶対に当たりたくない危険な箇所だ。それでも彼は自分で相手のやり方を受け入れて、『これで全てが終わる。もう次に進もう』とどう振る舞うべきかを理解していた」

 同局の解説を務め、ゴンサレス氏と同様にドジャースのOBでもあるノマー・ガルシアパーラ氏も「あの振る舞いが間違いなく全ての火種を抑えた」と強調。ヒートアップするチームを沈静化させた大谷の冷静を称えた。

「ショウヘイが当てられた一球には間違いなく意図があった。3-0から明らかに彼を狙っていたからね。ドジャース側が起こるのは当然だったと思う。それでもショウヘイの見せた、あの姿勢は立派だった」

 試合中の実況でも「我々はまた彼が別次元の人間なのだと思い知らされた。彼の神秘性というか……、彼は本当に凄い。普通であれば、感情が爆発して暴言を吐いているかもしれない。あれは尋常じゃない行動だ。伝説がまた一つ加わったと思う」と絶賛された大谷。聖人君子とも言うべき男の行動への反響はしばらく続きそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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