島村はやはりチームにとって大きな存在だ(C)Volleyball World バレーボールの女子日本代表は現地6月18日…

 

島村はやはりチームにとって大きな存在だ(C)Volleyball World

 

 バレーボールの女子日本代表は現地6月18日、香港で行われている「FIVBネーションズリーグ」予選ラウンド第2週のタイ戦に臨み、2-3(18-25、23-25、25-20、25-15、15-11)で勝利した。出だしから相手のディフェンスに対して攻めあぐねた日本は今大会初めてセットを奪われると、続けざまに第2セットも落としてしまう。2セットダウンの窮地に立たされたものの、そこからアウトサイドヒッターの佐藤淑乃(NECレッドロケッツ川崎)が奮起し、そして何と言ってもオポジットの和田由紀子(NEC川崎)が終わってみればチーム最多29得点と大爆発して逆転勝ちに成功した。

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 第1、第2セットと試合の前半では相手を追いかける時間帯が長かったわけだが、そんななかでも「これ以上は点差を離したくない」「ここで相手の流れを断ち切りたい」という場面で必ず得点したのが、ミドルブロッカーの島村春世(NEC川崎)だった。

 センターエリアからライト方面にかけて、ときにはセッターのすぐそばで、ときにはネットのアンテナ付近まで、移動してから放つブロード攻撃がこの試合では炸裂した。第1セットは5本中4本、第2セットは7本中5本、とまさに「打てば決まる」といった具合だ。最終的にアタックだけで16得点、決定率は7割近くに達し、和田と佐藤に続いてこの日チーム3番目のスコアラーとなった。

 ミドルブロッカーの島村が攻撃面において存在感を発揮することの価値は、得点だけにとどまらない。相手にとっては島村をマークせざるをえなくなり、そうしてほかのサイドアタッカーたちへのブロックが手薄になるのだ。タイ戦において象徴的だったのは、第2セット開始時からコートに立ったアウトサイドヒッターの秋本美空(ヴィクトリーナ姫路)が序盤にバックアタックを決めた場面。アウトサイドヒッターの石川真佑(ノヴァーラ/イタリア)がレフトで、島村がライトでアタックの助走に入ったことで、相手ブロッカーは分散し、センターエリアがぽっかりと空く状況に。まさにパイプアタックのお手本といえるシーンで、秋本のこの試合初得点を演出したのであった。

 島村自身、ブロード攻撃は代名詞といえるもの。この2024-25 大同生命SVリーグはアタック決定率48.5%でリーグ3番目の数字を残している。「スピード、キレに関して過去一と思えました」と本人は振り返り、その武器を携えて今年の代表活動に臨んだ。

 以前、ブロード攻撃を打つ際のコツについて聞いてみると「楽しいんですよね。トスの軌道を見て、落下点に向かってタイミングを合わせて走り込んで打つ。ゲームみたいじゃないですか!?」とほほえんだ島村。実は、女子バレーボール界きってのゲーマーとは本人も自負するところで、今年5月の女子日本代表キックオフ会見では(公財)日本バレーボール協会のトップパートナーである(株)カプコンの最新作『モンスターハンターワイルズ』を引き合いに出して「コート上では誰よりも動き回って、オフは『モンハンワイルズ』と、しっかりとメリハリをつけた生活をしたい」と語り、場内の笑いを誘っていた。

 そんな粋なセリフを口にできるのも、代表活動は10年以上に及ぶベテランならではだろうか。

 鋭い切れ味を伴って打ち込むブロード攻撃は、チームにとって頼りになる武器だ。そこには、辛苦を乗り越えながら勝利することの楽しさをプレーに還元する“島村春世らしさ”が詰まっている。

[文:坂口功将]

 

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