好調な走りを見せた山梨学院大のドミニク・ニャイロ 1月の箱根駅伝では上位を期待されながら、インフルエンザで主力を欠いて17位と予想外の結果に終わり、シード落ちした山梨学院大。今年も、大砲のドミニク・ニャイロ(3年)のほか、上田健太(4年…



好調な走りを見せた山梨学院大のドミニク・ニャイロ

 1月の箱根駅伝では上位を期待されながら、インフルエンザで主力を欠いて17位と予想外の結果に終わり、シード落ちした山梨学院大。今年も、大砲のドミニク・ニャイロ(3年)のほか、上田健太(4年)や市谷龍太郎(4年)、永戸聖(3年)と1万m28分台の選手を擁し、本番でも往路で台風の目になり得る力を持ったチームだが、10月14日の予選会では4位と少し抑え目の走りをした。

 体調不良の市谷と前回9区を走った古賀裕樹(4年)がメンバーを外れ、登録メンバー14名のうち4年が3名で、箱根経験者は5名だけ。

「ニャイロと健太と永戸、久保和馬(3年)と藤田義貴(3年)、河村知樹(4年)は少し前で走らせて、ほかは大集団の後方でスタートして後半から上がってくる走りをさせた」と上田誠仁監督は言う。

「後方の選手たちもひとつ前のグループについて淡々と走らせる手もあったと思いますが、この予選会は絶対に外せない大会でもあります。今回のメンバーの大半は予選会どころか、高校時代に全国高校駅伝やインターハイの経験もない県大会止まりの選手たちでした。体調的にはよかったものの、浮き足立ったりストレスを感じたりしないかという心配もあったので、1位通過を狙うのではなく少し抑え気味に走らせた。でも彼らもこの舞台を経験したことでアスリートとしての成長もあったと思う。今後はそこに期待をして見ていきたい」(上田監督)

 前回の箱根は4年生が5人走っている。彼らが抜けた大きな穴を埋めるためにも、ここで新しい選手たちの成長を促がす意味もあった。後方グループは前半の10kmを30分30~40秒で入り、後半を上げさせる構想だった。その結果は1時間00分56秒の片山優人(3年)のほか、3人は1時間01分台前半にとどまった。「後半上がらないままでしたが、流れもあるから」と上田監督は苦笑する。

 そんな初出場勢だけでなく、主力にも不安はあった。中でも上田監督が最も心配していたのは、なかなか調子が上がってこないエースのニャイロだ。さらに主将の上田も5月の関東インカレでケガをしていて、今回がそれ以来のレースという不安を抱えていた。これも予選会で慎重なレース運びを選択した要因だ。

「でもニャイロもここ1週間くらいでみるみる状態がよくなってきた。結果は(個人順位)2番で、本人も自分なりに手応えをつかんだと言っていたので、今後に向けては明るい材料になりました。健太も永戸とふたりで集団を引っ張った場面もあって、それで疲れたと言っていて今回はもうひとつでしたが、ゴール後も脚には異常がないということでした」(上田監督)

 最初から先頭集団で走ったニャイロは、15km手前からレダマ・キサイサ(桜美林大)に離されたが57分33秒でゴール。日本人集団で走っていた上田と永戸はラスト5kmで遅れ、上田は1時間00分00秒で23位、永戸は1時間00分06秒で26位という結果だった。

「個人としてはもう少し走れたのではないかと思いますが、60分を切れればというくらいの設定だったので、しっかり仕上がってきていると思います。永戸と15kmの手前くらいからいこうと話していたので前に出てみたんですが、うまい感じで使われて、前にも追いつけなかったので一度下がりました。そこでガーッといき切れなかったのは詰めの甘さ。自分の中のスピード感と体力はまだまだだなと感じました。それでもラスト2kmくらいからは80mほど先行されていた永戸を捉えるような伸びのある走りができたので、そのあたりには故障中のウエイトトレーニングの成果も出ていると思う」(上田健太)

 上田監督も、主力選手たちの走りを次のように評価する。

「主力のひとりだった4年の河村が最後は酸欠になったみたいで、1時間01分30秒かかったのは誤算でしたが、彼と一緒にいかせた久保は最初の10kmを30分22秒でいって後半は30分に上げるという設定通りの走りをしてくれたのは収穫です。その後ろの集団で走っていた選手たちも練習では久保と同じレベルのグループでやっているので、自分たちの結果は1時間1分前後とよくなくても、久保がキッチリ走っているのを見て『自分たちもいけるはずだ』というのをつかんだと思います。それに永戸も一時は健太の前を走っていた。健太の背中を追いかけながらやってきましたが、追いついているなという頼もしさを感じます」

 今年は主将の上田とも話をして、これまで一緒にやっていた強化グループと育成グループの練習スケジュールを分けて切磋琢磨をより意識させたという。その成果は、予選会エントリーメンバーに1年生の斎藤有栄と鈴木春記が入るという形で表れた(出走はせず)。上田監督も「今までとは違った山梨学院大になってきている」と期待する。インフルエンザの影響で過去最低順位に終わった屈辱も、上田健太が「今年は生活から注意するようになり、体調不良者も出ていない」と教訓として生かされている。

 そんな山梨学大がひとつのポイントとして意識しているのは、市谷を含めた4年生を多数エントリーしている11月5日の全日本大学駅伝だ。上田監督も「次の全日本では箱根で戦うチームがほぼ揃うので、きちんとピーキングをして何かしらの手応えをつかみ、箱根に臨んでいきたい」と意気込む。

 山梨学院大の牙を隠しての予選会4位は、前回の雪辱を果たす第一歩になっただろう。