夏の大阪大会の組み合わせが決まった。全国屈指の名門・大阪桐蔭の初戦は西野田工科と港の勝者となった。センバツ出場を逃し、春…
夏の大阪大会の組み合わせが決まった。全国屈指の名門・大阪桐蔭の初戦は西野田工科と港の勝者となった。センバツ出場を逃し、春季近畿大会でも東洋大姫路にコールド負けを喫した今年の大阪桐蔭。激戦区の大阪を勝ち抜き、全国でも通用する実力があるのか。
投手陣は全国4強に並ぶ特Aクラス
まず投手陣。今年の高校野球で、投手力が特Aのチームといえば、横浜、健大高崎、仙台育英、智弁和歌山の4チームが挙がるが、大阪桐蔭もそれに負けない層の厚さがある。
近畿大会では、中野 大虎投手(3年)、森 陽樹投手(3年)の2枚看板が東洋大姫路打線に打ち込まれ、コールド負けを喫したが、この試合を除くとほとんどの試合で抑えており、中野、森の能力の高さは際立っている。
中野は非常にテンポが早く、捕手からボールを受け取ったら、5秒以内で投球動作に入る。攻撃へのリズムを作ろうとする意識が高い。最速147キロのストレートは質が高く、回転数、回転効率も高いストレートを投げている。
クイック、フィールディングなどもしっかりしており、名門校で揉まれた好投手だと感じさせる。大事な試合では中野を任せたいと思わせる経験値がある。
ただ、関東第一との親善試合では5回に集中打を浴びて、4失点。東洋大姫路戦でも打ち込まれたように、イニングごとにばらつきがあるのが課題だ。
基礎技術が高い投手なので、しっかりと修正して大会に臨めば、エースらしい投球を見せてくれそうだ。
好調時の森は140キロ後半の速球、130キロ近いフォーク、スライダーで圧倒するパワーピッチャー。ただ、力みにより制球が乱れ、無理に力勝負にいって打たれるケースが目立つ。森の能力からすれば、投球内容は物足りなさが残る。最後の夏では世代を代表する剛腕に相応しい投球を見せたい。
この夏、飛躍を期待されるのが2年生の吉岡貫介投手だ。関東第一戦での投球は中野以上だった。
常時140キロ中盤・最速147キロの速球は手元でぐっと伸びる強さがあり、スライダー、フォーク、カーブを器用に投げ分け、5回無失点の投球。体重移動もうまく、リリースポイントも安定している。そんな吉岡だが、まだ公式戦の登板はない。近畿大会では勝ち進めば、準決勝で登板予定だったが、コールド負けをしてしまい登板はなかった。富山の招待試合で好投しており、夏でデビューを飾ることになりそうだ。能力的には織田翔希投手(横浜)など高校2年生右腕のトップレベルに位置する投手たちと変わりないレベルにある。
佐井川 湧牙投手(3年)は今年の大阪桐蔭投手陣の中で貴重な左腕。脱力が効いた投球フォームから130キロ後半の速球で差し込ませる投球ができる。対戦した打者はかなり打ちにくそうにしていた。カーブ、チェンジアップの精度も高い。夏場はかなりのイニングを投げることになりそうだ。
現状では中野、森、吉岡、佐井川の4人が中心。この4人が機能すれば、大阪大会はかなり優位に試合運びができそうだ。
残りの1枠〜2枠を練習試合で競っている段階だ。控え投手も140キロ台の速球を投げる投手を擁しており、どの投手がベンチ入りするのか注目したい。
打線はパワー不足、走塁ミスなど課題は満載
夏勝つためには打線のレベルアップが不可欠だ。近畿大会では東洋大姫路相手に2得点、関東第一との親善試合では、2試合で5得点に終わった。従来の大阪桐蔭といえば、毎年本塁打を打てる打者を揃え、パワー野球で圧倒し、試合を優位に進めるのが流れだったが、近年の大阪桐蔭の打者はトップが浅く、スイングが小さいのが気になる。ある程度、コンタクトできるのだが、長打にできる感じがしない。新基準バットになって技術力、フィジカルの差が得点力に大きく現れるようになったが、6月前半での大阪桐蔭打線はややおとなしい感じがした。
ただ、大阪桐蔭は5月〜6月にかけて強化練習をしており、状態が落ちているのは否めない。それでも、ハードヒットが打てて、その上で長打が増える打線になってほしい。
打線の中心はミート力の高いショートストップ・宮本 楽久内野手(3年)、バットコントロールの良いセンター・畠中 健太外野手(3年)、打撃技術の高さはベンチ入りした左打者の中で最も高い内海 竣太外野手(2年)、190センチ105キロのスラッガー・吉野 颯真内野手(3年)の左打者4人。
吉野はこの中でも最もパワーはある選手で、新基準バットでなければスタンドインという当たりも見られる。求められるのは、大阪桐蔭の4番として、味方が苦しんでいる時でも打てる勝負強さだ。
右打者では上田 真聖外野手(3年)の成長が著しい。ライトから強肩を披露し、パワフルなスイングで内野の間を抜く打球を連発する。左打者が多い今年の打線ではキーマンとして活躍しそうだ。
気になるのは、走塁ミスが多いこと。関東第一との親善試合では、牽制で刺されたり、飛び出してアウトになるプレーが見られた。この点は西谷浩一監督も言及をしていたが、インプレー中はボールから見離さないところは夏までの課題だ。
今年の大阪桐蔭が全国制覇するために必要なのは、劣勢になっても打線が援護して勝ち切る爆発力。そして1対0、2対1などロースコアでも勝ち切る守備力の高さ、冴えた戦略が問われる。野球脳の高さが問われる試合で、経験値の高さを発揮したい。
この1年を振り返ると、滋賀学園、東洋大姫路相手に苦しい試合を強いられ、敗れてきた。その相手に勝ちきる試合運びができれば、今まで秘めていた潜在能力の高さを発揮し、想像以上のパフォーマンスを見せるのではないか。ここまで苦しんだ分、夏にピークに達することを期待したい。