サッカー日本代表のワールドカップ・アジア地区予選が終了した。すでに本大会出場を決めていたチームは、この6月シリーズを、…
サッカー日本代表のワールドカップ・アジア地区予選が終了した。すでに本大会出場を決めていたチームは、この6月シリーズを、どのように活用したのか。そこで得た輝かしい未来につながる「希望」と、北中米ワールドカップで勝ち上がるための「課題」は何か? ベテランのサッカージャーナリスト、大住良之と後藤健生が語り尽くした!
■「素晴らしかった」デビュー選手
――新戦力で特に目についた選手はいますか。
後藤「オーストラリア戦なら、平河悠や鈴木唯人は良かったよね。あのポジションには堂安律や久保建英、伊東純也と序列が上の選手がたくさんいる。でも、たとえばケガもあって今シーズン後半は不調だった伊東は、復調する可能性はもちろんあるけど、年齢(32歳)を考えると1年後にさらに調子を落としている可能性もある。そうなった場合でも、平河がいるじゃないかと考えられる。今回だってCBが次々とケガしたけど、それで困ったかというと、全然そうはならなかったもんね」
大住「インドネシア戦で代表デビューした鈴木淳之介も素晴らしかったね」
後藤「そうそう、初めてなのにすごかった。オーストラリア戦では少し危ういかなと思っていた守備が、インドネシア戦ではすっかり安定したもんね」
大住「7月のE-1選手権を前に、森保一監督はこの2試合を120%くらい有効活用したんじゃないかな」
後藤「フルメンバーを呼んでいたらインドネシアに8-0くらいで勝っていたかもしれないけど、だからどうした、という話になったはずだしね」
大住「高井幸大なんて、いつヨーロッパに行ってしまうか分からないけど、今回出たJリーグの選手がまたE-1に向けて呼ばれて、森保監督の下でのトレーニングでいろいろなことを身につけたら、また良い競争が生まれるんじゃないかな。9月のアメリカ遠征に何人か食い込んでいけるようになればいいなと思うけど」
後藤「今回新しく招集されたJリーガーは、E-1ではリーダーとして頑張らないといけなくなるんだよね。それもまた、面白い経験。見習いからリーダー格になっていくんだから」
■「新しい戦力」が欲しいポジション
――実際に、アメリカ遠征に割り込んでいけそうな選手はどのくらいいそうですか。
後藤「人数としては、相当少ないんじゃないかな」
大住「そうだね。今回初めて、あるいは久しぶりに招集された選手たちから、3人くらいは入っていけるんじゃないの」
後藤「それが誰になるか。大住さんなら誰を入れますか」
大住「鈴木唯人は良いと思うな。鈴木淳之介もそうだし、あとは平河悠だね。後藤さんが伊東純也のケガの話をしていたけど、伊東はスピードも運動量もちょっと落ちている感じがする。堂安律や三笘薫とはまた違う、ああいうガンガンと突っ切っていく選手が1人は欲しい。だから、平河。イングランドに行って1年ほどだけど、よく伸びたと思うね。それから町野修斗も悪くないと思った」
後藤「そこなんだよね。誰かすごいCFが出てきてくれたらなあ。町野も悪くはないんだけど、じゃあ上田綺世より良いかと言われると…」
大住「そうなんだよね。今回の最終予選で、日本は10試合を戦って合計30点。ということは、1試合平均3点なんだよ。これは最終予選では異常に高い数字だと思うんだけど、その中で個人の最多得点は小川航基と、最終戦で2ゴールを決めた鎌田の4点なんだよね。チームで30点取るというのは、ふつうは少なくとも1人で10点取るエースがいてこそ実現するものなんだよ。当初は上田綺世がエース候補だとみられていたけどケガをしてしまい、代わって小川がバンバン点を取って、どっちがいいかなと言っていたら、両方とも使えなくなってしまった。それでもインドネシア戦みたいに大量点を取るんだからねえ」
後藤「CFは決め手なしのままだね。新しい戦力が一番、欲しいポジションなのに」
■オーストラリアとの2戦で「無得点」
大住「エースストライカーがいなくても30点取ったことは素晴らしいんだけど、やはりワールドカップの戦いを考えると、本当のエースというのが欲しいよね」
後藤「僕は30点を取ったことよりも、サウジアラビアとオーストラリアとそれぞれ2試合、計4試合戦って、サウジとのアウェイ戦で2点取っただけに終わったことのほうが気にかかる。ホームのオーストラリア戦での1点はオウンゴールだから、オーストラリアと2試合やって、とうとう点を取れなかったと言えるでしょ」
大住「でも、サウジもオーストラリアもワールドカップのグループ突破できる力があるかは分からないけど、アジアの中ではトップクラスのチームだよ」
後藤「そうだよ、そのオーストラリアが恥も外聞もなくあんな守り方をすれば、そりゃ難しくなるのは分かるよ。だけど、ワールドカップで優勝を目指そうというチームが、相手に守りを固められたから崩せませんでした、では困る。
今は日本も相当リスペクトされているから、ヨーロッパのチームであっても、日本相手に先制したら守りを固めようとするチームはあるはず。そうなって点を取れませんとなったら、負けちゃう。
本当に優勝するつもりなら、オーストラリアくらいのチームに守りを固められても、1、2点は取って勝たなきゃ。そういう意味では、CFは現れなかったね。簡単に現れるとは最初から思っていないけど、やはりいたらなあと思う」