浦和がリーベル、インテル、モンテレイという強豪に挑む(C)Getty Images 各大陸王者やランキング上位の32クラ…

 

浦和がリーベル、インテル、モンテレイという強豪に挑む(C)Getty Images

 

 各大陸王者やランキング上位の32クラブが出場する、新しいクラブワールドカップが開幕した。4チーム×8組、どのグループも名が通った強豪ばかりだ。

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 グループE、2022年ACL王者・浦和レッズの初戦は、6月18日早朝4時(日本時間)にホイッスルが鳴る。相手はCONMEBOLクラブランキング上位で出場権を得た、アルゼンチンの強豪リーベル・プレートだ。2戦目はUEFAクラブランキング上位のインテル、3戦目は2021 CONCACAFチャンピオンズカップ優勝のモンテレイと続く。

 選手の総市場価値額ではJ1トップクラス(約33億円)の浦和だが、モンテレイはその3~4倍、リーベルは5~6倍、インテルに至っては30倍以上と戦力に大きな差がある。浦和にとって、格下の挑戦であることは認めざるを得ない。

 この状況下で積極的にハイプレスをかけて背後へ運ばれ、相手の高価なFWと浦和のDFが同数対応を強いられれば、失点は早い。そのためミドルブロックを作って守備密度を維持し、ボールを回されながらも粘り強くスライドし続ける守備がメインになるだろう。

 元々、マチェイ・スコルジャのチーム作りは守備がベースだ。今季J1の10節辺りから5連勝を飾って好調に転じたときも、きっかけはミドルブロックの安定だった。今大会の浦和は総じて弱者のハードワークを強いられる可能性は高いが、今季のチームの方向性としては大きく変わらない。違和感なく戦えるのではないか。

 一方でアップデートは必要だ。

 ミドルブロックの形は、2トップに松尾佑介と渡邊凌磨。その両脇の斜め後ろに、サイドハーフのマテウス・サヴィオと金子拓郎が立ち、ボランチの安居海渡とグスタフソンと共に中央を締めるボックスを作る。そのまま真ん中でインターセプトするか、あるいは相手がサイドへ出たら全体でワンサイドへ追い込み、逃げ場を奪っていく。サヴィオと金子はボランチに並ばず、4-2-2-2のように立つので、ボールを奪った後に前線4枚がカウンターに行きやすいのはメリットだった。

 ただし、急所もある。それは中央を締めるが故に空いたサイドから、サヴィオや金子の裏へボールを運ばれるときだ。昨今のJ1は3バックが多いため、そこでパスを受ける選手はウイングハーフ1枚になることが多い。両サイドバックの石原広教や長沼洋一(荻原拓也)が迎撃に出れば、概ね事なきを得ていた。しかし、相手のシステムによってはそうもいかない。

 15節のG大阪戦、16節の新潟戦も急所を突かれる場面があったが、直近では22節のC大阪戦だ。4-2-3-1のC大阪は、サイドハーフが石原らをピン留めした上で、サイドバックが高い位置を取ってサヴィオらを置き去りにし、ボールを運んできた。必然、サイドは数的不利になってフリーでクロスを放り込まれるし、それを嫌ってサヴィオらの位置を低くして4-4-2で構えれば、ミドルブロックはほぼローブロック化。我慢を強いられる。

 ずっと理想的なボールの奪い方が出来るわけではないので、もちろん我慢は必要だ。しかし、我慢ばかりになると、90分はもたない。

 初戦のリーベルを想定すると、相手はC大阪に近い配置の4-3-3を敷く攻撃的なチームであり、右ウイングには17才の怪物マスタントゥオーノが立つ。右サイドバックやインサイドハーフの関わり次第では、彼はサヴィオの周囲で自由にボールを受けられる。あるいはマスタントゥオーノは中でもプレーできる選手なので、中へ入って長沼を引き寄せつつ、右サイドバックがオーバーラップして一発で背後を陥れる、といった可能性も考えられる。浦和の守備的急所を踏まえると、C大阪戦同様、そのままではやりにくい相手だ。

 どう微調整するか。

 仮に相手のサイドバックが高い位置を取るならば、反面、トランジションでその背後は空く。渡邊を左サイドハーフに移して守備を任せ、2トップのサヴィオと松尾がサイドへ流れるなどカウンターの起点を作ってもいい。これはC大阪戦でも見られた手札だ。この辺りの駆け引き、試合中の調整はポイントになる。

 そしてもう一つ、浦和が我慢ばかりにならないための重要な方法がある。ポゼッションだ。奪ったボールを失わずに保持し、運ぶ。あるいはGKからビルドアップする。リーベルは4-3-3のままプレッシングに来る可能性が高いので、中盤のスペースを使いながらボールを保持し、運びたい。ポゼッションがある程度機能すれば、守備で我慢を強いられても戦い抜けるはず。

 そのキープレーヤーは言うまでもない。グスタフソンだ。ビルドアップも、アタッキングサードの崩しも、この異次元の魔術師がタクトを握るのは間違いない。浦和は守備戦術の細かさに比べると、攻撃はタレントの配置任せで、人に任せる領域が大きい。その意味でもグスタフソンは唯一無二だ。

 もう一人のキープレーヤーは西川周作。リーベルがアグレッシブにプレッシングに来れば、西川から一発でひっくり返すキックが重要になる。相手が浦和を明らかな格下と見て戦ってくるなら、西川のキックは得点に近づく最も有効な手段かもしれない。相手が焦れるくらいまで耐えれば、隙は必ず生じる。

 守備の微調整と、グスタフソンや西川の異能。浦和を勝利に導くキーワードだ。

 そして言わんや何より、恐れないこと。局面の勝負は、不安や恐れを抱いた瞬間に負ける。ワールドカップに挑む日本代表もそうだった。直近でグループステージを突破した2018年、2022年を振り返っても悲観的展望が占める中、コロンビアやベルギー、ドイツやスペインに対して日本は恐れがなかった。

 威風堂々。仕掛けろ浦和。大事なことなので二度言う。キックオフは18日早朝4時(日本時間)だ。

[文:清水英斗]

 

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