「元日本ハムの柿木 蓮投手(大阪桐蔭)が草野球チームに入ったらしいですよ」 ある日知人から掛かってきた電話に驚きつつも「…

「元日本ハムの柿木 蓮投手(大阪桐蔭)が草野球チームに入ったらしいですよ」

 ある日知人から掛かってきた電話に驚きつつも「まだ野球を続けているんだと」と嬉しくもあった。筆者は柿木の一学年下の世代。大阪桐蔭での右腕の活躍に魅せられてきた一人だ。

 SNSを見に行くとさらに驚かされることに。柿木の合流が発表された軟式の草野球チーム「NBS」には、昨年まで西武に在籍していた髙木 渉外野手(真颯館)や元DeNAの宮本 秀明外野手(秀岳館―パナソニック)、元日本ハムの高山 優希内野手(大阪桐蔭)らが加入したのだ。なぜこんなにも元プロ野球選手が集まるのだろうか。胸を躍らせながらすぐさまチームに取材をお願いすることにした。

「もう一度レギュラー争いをしたい」がコンセプト

「NBS」は2024年4月に始動した新チーム。仕掛人は日本ハムで2018年から2022年までの5年間プレーした難波 侑平氏だ。創志学園時代には投打で活躍し、3季連続で甲子園出場を経験している。17年のドラフトでは日本ハムにドラフト4位で入団した元プロだ。プロ入り後は、高い壁にぶつかり一軍出場を果たすことができなかった。4年目のオフには育成契約を結んだが、怪我に泣き、支配下復帰を果たすことなくプロ野球選手としてのキャリアにピリオドを打っている。

 引退後は地元で脱毛サロンを経営し、今では関東圏でハウスクリーニング会社の代表取締役も務めている。仕事に明け暮れる日々を送った難波氏は、「元々軟式野球チームを作りたかった」夢を実現するべく、周囲の協力を経て軟式の草野球チームを結成。活動は基本的に週1で日曜日に試合や練習を行い、地道なチームメイト集めで、現在は約30人程度が参加している。

 メンバーも豪華な面々が名を連ねる。元プロ選手だけでも難波、高木、柿木、宮本に元西武の林崎 遼内野手(東洋大姫路ー東洋大)が在籍している。「日本ハム時代の繋がりで高山とは元々連絡とる仲ですし、柿木も家が近かったのでご飯を食べたりもしていました。そこから参加してくれるようになりました」と難波氏の人脈をもとに、段々とチームの認知度も高まっていったという。

 なぜ元プロ野球選手が集まるのか。難波氏が掲げる方針がある。

「『大学や社会人も含めて野球を引退した人、もしくはもう一度野球熱を高めたい人に、もう一度レギュラー争いをして欲しい』という気持ちでこのチームを作りました。選手には『一度でいいから来てほしい』と声をかけて、そこから実際に入るかどうかは皆さんにお任せしています。みんなでワイワイしながら野球を楽しむのが好きなので、チームの雰囲気、会話を大事にしています」

 実際に取材した日は、難波に宮本、高木のプロ野球経験者3人が参加。「1番・ピッチャー」として出場した難波は、投げては真っすぐに緩いチェンジアップを巧みに使った投球、打っては自慢の快足を飛ばし、高校時代さながら二刀流の活躍でチームを勝利に導いた。試合中盤には宮本が特大本塁打を放つと、ベンチ総出で手荒い祝福を受ける場面も。年齢や経歴関係なく、チーム全員で盛り上がる雰囲気に難波は、「仲の良さはもちろん、試合になると真剣になるところがチームの良さです」と笑顔を見せた。

将来の夢は「野球をやりたい人」の増加

軟式野球チーム「NBS」を率いる難波さん

チームは結成から連勝を続け、今年4月には軟式の全国大会「全国軟式野球大会グランドスラム杯」に出場した。結果は準優勝と惜しくも頂点奪取とはならなかったが、全国でも戦えることを証明した。

 「NBS」を率いる難波は26歳の若さで会社経営を始め、自身が創設した草野球チームでも成功を収めつつある。戦力外通告から3年が経つが、「プロ生活に後悔はない」と言い切れるのも、セカンドキャリアで輝く居場所を見つけているからだ。

「正直、こんな風になることは思ってもいなかったです。よく行動力があるとは言われますけど、やりたいことをやっているだけなので。不安があったらうまく行かないことの方が多いと感じるので、仕事でもミーティングなどを重ねたり、喋りやすい環境を作ったりして頑張っています」

 将来的には元プロ野球選手だけでなく、もう一度野球をやりたい人、元高校球児でセカンドキャリアに悩む人などの助け舟として支援することも夢に掲げている。

「一度野球を引退してしまった人に、『こういう選択肢があるよ』と講義を開けたらいいなと思います。チームとしてもゆくゆくは軟式野球界では有名になりたいし、僕らをみて野球をやりたいと思う人が増えたら嬉しいですね」

 コンセプトでもある「もう一度野球熱を高めたい人」の輪を広げていくことで、野球界の発展に少しでも寄与していく考えだ。