高校野球の育成と発展に尽くした指導者を表彰する「育成功労賞」に、熊本県内からは県立甲佐高校野球部の責任教師・本田秀博さ…

 高校野球の育成と発展に尽くした指導者を表彰する「育成功労賞」に、熊本県内からは県立甲佐高校野球部の責任教師・本田秀博さん(58)が選ばれた。高校野球に携わって34年。指導や育成だけでなく、裏方として支えてきた実績が評価された。

 「草刈りが終わったところ」。チームが練習試合中だった土曜日(7日)の午前、本田さんは落ち葉掃除などで使うブロワーを手に、思いを語った。甲佐に着任して9年目、指導はもっぱら若い先生に任せ、裏方に徹しているという。広いグラウンドは手入れが行き届いている。1年生部員の上村越生(こお)さん(16)は「本田先生は教えるのもうまいけど、草刈りの姿を見ていると、野球が好きなんだなあと思います」。

 小学生から野球を始め、大学時代の一時期を除いてずっと野球に関わってきた。「中学のころはチームで一番下手だったけど、必死にレギュラーをつかんだ。結局、野球が単純に好きなんです」

 教師になったのも指導者になろうと思ったからだ。進学校、実業校、郡部の生徒数が少ない学校――。教えてきたのは、高校野球の「強豪」とは言い難い学校ばかり。2006年の夏の熊本大会では、熊本農の監督として8強まで進んだものの、「こんなに勝てない指導者はいない」と笑う。

 今回の受賞については「選手と一緒に汗を流して、負けたら涙を流す。『考えるな、感じろ』で長くやってきただけ。ありがたい」。カンフー映画「燃えよドラゴン」主演のブルース・リーの名ゼリフを使いながら、感謝を述べた。

 気になっているのは、野球人口の減少と、都市部の学校への部員の一極集中だ。郡部などでも「何とか野球の火を消さないように」の思いを強くしている。甲佐も部員は3人。今夏は御船、矢部、湧心館、八代農と5校連合チームで臨む。(前地昌道)

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〈ほんだ・ひでひろ〉 1991年4月に人吉高校で責任教師(のちに監督)となり、八代、御船、熊本農の各高校で責任教師や監督を務めた。2017年4月から甲佐で責任教師を務め、高校野球の指導者歴は34年を超えた。(前地昌道)