5回5失点KOとなった戸郷は首をかしげた(C)産経新聞社 野球評論家の佐野慈紀氏が現在の野球界を独自の視点で考察する「シ…

5回5失点KOとなった戸郷は首をかしげた(C)産経新聞社
野球評論家の佐野慈紀氏が現在の野球界を独自の視点で考察する「シゲキ的球論」第3回は今季なかなか浮上できない巨人のエースにスポットを当てる。
巨人は15日のオリックス戦(京セラドーム大阪)に3-8と敗れ、同一カード3連敗、貯金も消滅となった。
先発の戸郷翔征が粘れない。4回に丸佳浩の先制適時打が飛び出すなど、援護をもらいながら5回は先頭から連打を浴び、無死一、三塁のピンチを招くと宗佑磨にフォークを捉えられて同点の右前適時打を許す。さらに1死一、三塁では森友哉に直球を打たれて勝ち越しの右前適時打。さらに頓宮裕真、西川龍馬にも直球を打たれ、適時打を許す。この回、打者一巡、一挙5失点と崩れた。
5回91球を投げて、9安打5失点でKO、5敗目を喫した。8日の楽天戦(東京ドーム)では7回3安打無失点で2勝目と復調気配を見せていただけに、今後が心配されている。
今季は2年連続の開幕投手を務めるも開幕からふるわず、3戦連続勝ち星なし、4月12日に1軍登録を抹消された。復帰戦は5月5日の阪神戦(東京ドーム)。自身7度目の先発登板となった5月25日のヤクルト戦(東京ドーム)で6回7安打2失点。今季初勝利をあげている。
起伏が激しい今季のパフォーマンスに関して佐野氏は今季最長となる7イニングを投げた今月8日の楽天戦の内容に着目。この日の投球に関しては「久しぶりにいい戸郷投手を見ましたね」とコメント。持ち味の直球も威力あるまっすぐに戻っていたとした。その上で今季の戸郷の不振の大きな要因には「フォークの変化が早かったんですよ」と、決め球のスプリットの切れ味が悪くなっていたと指摘。打者に見極められる要因になったという。
それが8日の試合では「しっかりとベース前で変化していた」ことで、打者を封じ込め勝ち星につながったとした。
しかし迎えた15日の試合ではオリックス打線に直球、フォークとも再び捉えられたとあって、再生は道半ばといえそうだ。また、佐野氏は打線の状態も投手陣に陰を落としているとした。「まだまだ打撃陣も物足りなさはあります。波がありすぎるというんですかね。それがチームの状態を表している気がしますね」ときっぱり。週末のオリックス3連戦を3連敗となったチームでは直近6試合で本塁打なしと持前の長打力を欠いていることもクローズアップされている。
「投手だったらこの選手が引っ張る、打者だったらこの選手が引っ張るんだ、というものがまだ見えてこない。エースが活躍していないと、現在調子がいい投手にも影響します」と佐野氏はいずれにせよ、上昇気流を捉えるには開幕投手を務めた投手陣の柱、戸郷の復活が欠かせないと強調。
昨季はノーヒットノーランを達成と着実にここまで階段を上がってきた若きエースがトンネルを抜けるのはいつとなるのか。佐野氏も見守っていきたいとした。
【さの・しげき】
1968年4月30日生まれ。愛媛県出身。1991年に近鉄バファローズ(当時)に入団。卓越したコントロールを武器に中継ぎ投手の筆頭格として活躍。中継ぎ投手としては初の1億円プレーヤーとなる。近年は糖尿病の影響により右腕を切断。著書「右腕を失った野球人」では様々な思いをつづっている。
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