日本サッカー界のレベル向上が著しい。各年代の代表チームも、世界各地の大会で高い技術を披露している。だが、サッカージャー…

 日本サッカー界のレベル向上が著しい。各年代の代表チームも、世界各地の大会で高い技術を披露している。だが、サッカージャーナリスト後藤健生は、世界の大舞台で勝つためには、いや、今後もアジアで勝ち続けるためですらも、“足りないもの”があるという。それは何か?

■大学トップの対決でも「同じ問題」が!

 そんなことを考えながら、6月8日の日曜日には東京の味の素フィールド西が丘まで関東大学リーグの試合を見に行った。この数年、大学サッカー界をリードしてきた明治大学と筑波大学の一戦があったからだ。

 今シーズンは前節終了時点で筑波大学が3位、明治大学は4位だったが、これは消化試合数が上位2校よりも少なかったからでもある。いずれにしても、大学サッカー界のトップの対決であることは間違いない。

 ところが、試合はどちらも試合をコントロールすることができないまま、時間が経過。前半立ち上がりの5分に廣井蘭人、後半の73分に内野航太郎が決めた筑波大学が2-0で勝利したが、どちらもカウンターによる得点。内容的には明治大学が攻め込む回数は多く、シュート数も明治が6本、筑波が3本と明治が上回っていた。

 シュート数が6本と3本……。両チーム合わせて10本にも足りなかったのだ。

 結局、この試合でも攻撃に対する意識に問題があるように思えたのだ。

 攻め込んでチャンスになりそうな場面でも、完全な形でパスやクロスを送り込めないとみると、そこで攻撃をキャンセルし、いったん最終ラインやGKまでボールを下げてしまう。そうかと思うと、前線の選手たちがまだ準備できていないタイミングでロングボールを放り込んでしまう……。

 ボールをコントロールしてパスをつないで相手陣内まで運ぶ。適切なポジション取りをしてパスコースをつくる……。そうした教育はできているし、世界最高峰の試合の映像を自由に見ることのできる若い世代の選手たちの戦術眼は優れている。

 だが、最後のフィニッシュのところが身についていないようなのだ。

■まだまだ疑問符が残る「A代表」の攻撃力

 森保一監督が率いるA代表は海外クラブで活躍している選手も多く、クラブでシーズン2ケタ得点を決めている選手が何人もいる。おかげで、日本代表はこれまでの最終予選の9試合で24ゴールを記録。日本代表の得点力不足という問題はようやく解決されたかのように見える。

 だが、先日のオーストラリア戦では、やはり試合を完全にコントロールしながら決定機をあまり作れず、終了間際の失点で最終予選初の黒星を喫した。

 代表経験の少ない選手を数多く先発させたのだから、オーストラリア相手にあれだけの試合ができたことは確かに評価すべきだ。だが、ボールは握っているのに点が取れない、決定機の数が少なすぎる……。U-20日本代表やU-17日本代表と同じような試合になってしまったのだ。

 たしかに、6月5日のオーストラリア戦は「育成世代」の延長のようなメンバーだったかもしれないが……。

 だが、最終予選では大量点を奪って勝利する試合が多かったものの、オーストラリア、サウジアラビアとの4試合に限ってみると結果は1勝2分1敗。得点はサウジアラビアとのアウェーゲームでの2ゴールと埼スタでのオーストラリア戦でのオウンゴールだけ。

 つまり、A代表の攻撃力にも、まだまだ疑問符は残るのである。

■とても好ましく見えた「両チーム」の姿勢

 関東大学リーグの2試合を見た後、夜は関東リーグ1部の南葛SC対東京23FCの試合を観戦に行った。そこには、まったくの別世界が広がっていた。

 風間八宏監督が昨シーズンから指導している南葛SC。パスがつながるのはもちろん、攻撃のスピードもあるし、強引な突破力も、シュート力もあり、前半のうちに2点を奪ってリードして折り返し、後半は相手に合わせて3バックに変更してスタートした。

 マークをつかみやすくしたのだろうが、かえって相手を引っ張り込んでしまったようで、東京23FCが攻撃を仕掛け続ける。それでも耐え続けた南葛SCは、80分にロングカウンターから3点目を奪い、「これで勝負あり」と誰もが思った。

 ところが、後半のアディショナルタイムに入って、東京23FCが立て続けに2ゴールを決めて、最後までハラハラドキドキの展開が続いた。最高のエンターテインメントだった。

 ボールを持ったら前に運ぶ。強引にでも相手ゴールに迫る。守備面でのミスには拘泥せずに、常に前を向いて戦う……。

 もちろん、守備を安定させなければ、関東リーグでのタイトルとか、JFL昇格は難しいかもしれない。だが、なにかモヤモヤするものを抱えていた僕にとって両者の攻撃的姿勢がとても好ましいものに見えたのだった……。

いま一番読まれている記事を読む