部活動改革の実証実験に取り組む愛知県尾張旭市教育委員会と東邦ガス(名古屋市)が12日、尾張旭市役所で報告会を開いた。同…

 部活動改革の実証実験に取り組む愛知県尾張旭市教育委員会と東邦ガス(名古屋市)が12日、尾張旭市役所で報告会を開いた。同社は、希望した社員を休日に市内の中学校へ派遣し、部活動の指導をした。多くの保護者や生徒から高評価を得た一方、生徒とのコミュニケーションや安全面といった課題も見え、今後は研修プログラムなどを新たに導入し、9月から第2弾の実証実験を始める。

 教師の働き方改革などで部活動の指導者不足が深刻化するなか、市は今年1月、東邦ガスと指導者を派遣する協定を結んだ。同社が昨年5月から始めた自治体向けソリューションサービス「東邦ガス つなぐtech(ツナグテ)」の一環で、地域課題の解決を図るねらいがある。

 学生時代に競技経験がある社員5人が、市立西中学校のソフトボール部、女子バレーボール部、剣道部に派遣され、休日に生徒を指導した。社員は会社の副業制度を利用し、市から報酬を受け取る仕組みだ。

 保護者へのアンケートでは92%が「非常に良かった・良かった」と回答。生徒への調査では「(外部指導員に)ぜひ教えてほしい・できれば教えてほしい」が96%を占めた。「詳しい教え方をしてくれる」「平日と同じ場所でいつも通り練習できるのがいい」などの評価を得た。

 一方、懸念される点や気になったこと(複数回答)では、保護者の約2割が「安全面で外部指導員の指導に不安がある」と答えた。生徒の3人に1人は「技術面でもっと厳しく教えてほしい」、4人に1人が「外部指導員との心の距離を感じた」と回答。指導した社員からは「事務作業が面倒」、顧問からは「部活動の方針などを事前に共有しておくべきだった」という声が聞かれた。

 東邦ガスは、現状の業務量など洗い出し、外部指導員の活動が広がった際の業務量をシミュレーション。今後、教育現場での人手不足が予想されることから、業務効率化システムを開発し、作業負担の軽減を図る。指導員向けには大学などと連携した研修プログラムや、事前に活動方針や指導レベルを共有するシートを導入する。

 9~12月の実証実験第2弾では、対象を市立西、東、旭中学校の3校に増やす。指導者も東邦ガスグループのほか、地域の企業や団体にも広げて募る。

 また、東邦ガスでは、尾張旭市の実証実験をもとに、企業人材の活用と業務効率化を組み合わせた新たな部活動支援モデルの構築を進める予定で、実証実験に9月から参加する自治体を東海3県から募るという。

 東邦ガスの担当者は「地域の企業や団体を巻き込みながら、課題解決を図り、中学生の笑顔につなげていきたい」と話す。

 尾張旭市は今年度、実証実験とは別に新たな部活動の運営形態を検証するため、3中学校合同の地域バスケットボールクラブの創設▽小学生地域金管クラブの合同実施▽休日限定の新しい種目の実証などに取り組む。来年4月からは、教職員による部活動の休日指導を廃止するという。(松永佳伸)