2軍降格後に己の課題を見つめ直し、ひたすらに打ち込んだという筒香。(C)産経新聞社苦しんだ序盤戦で受けた2軍降格 メジャ…

2軍降格後に己の課題を見つめ直し、ひたすらに打ち込んだという筒香。(C)産経新聞社
苦しんだ序盤戦で受けた2軍降格
メジャーでの挑戦を経て、2019年以来の横浜帰還が決まった昨年5月、筒香嘉智は復帰戦で名刺代わりの起死回生の逆転3ランを放った。
しかし、最終的なレギュラーシーズンの成績は、出場57試合で、打率.188、7本塁打、23打点、OPS.683。「アメリカで数年プレーをしていたので、当初は対応のところで少しは時間かかるなという僕のプランではあったんですけれども、怪我の影響もあり最後まで長引いてしまった」と本人も納得の行かないシーズンを過ごしてしまった。
【動画】ハマの大砲が復活を感じさせる特大弾! 筒香嘉智の打撃をチェック
だが、チームが日本一にまで駆け上がったポストシーズンでは、打率.273、1本塁打、6打点と状況は好転。強烈なキャプテンシーと打棒の復活で、多大なる貢献を果たした筒香は「やってきたことが日本シリーズでちょっとハマってきたっていう感覚がありました。最終戦ではもうこれだなっていうのが、自分の中で明確になりました」と25年に向けて手応えも掴んでいた。
光が射し込み、今年こそは暴れてくれるはず――。そんな淡い期待を背負った33歳は、今季、佐野恵太らとの激しい争いに勝ち、開幕からクリーンアップでの起用が続いた。しかし、周囲からの期待とは裏腹に、思うような成績は残せなかった。
「真っ直ぐも変化球も、両方打てていないんで……」
そう漏らすほど調子を落とした筒香は、打率.115にまで落ち込んだ4月下旬に2軍降格となった。
それでも筒香は腐らなかった。2軍の本拠地がある横須賀で人知れず現状打破に奔走。「特にこれということではないですけれども、とにかくもういろんなことをしました」と常日頃から重きをおいていると公言してきた“身体の中の部分”にもフォーカス。「毎日毎日凄い時間をかけてやっています。それにプラスして、どうしても量をやらないとわからない部分があったので、たくさん打ちました」と1軍ではできない取り組みを、あえて丁寧に時間をかけ、ぶれずにやり続けた。
そして、交流戦に突入した6月、パ・リーグの主催試合でDH起用が可能となった背景もあり、筒香は満を持して1軍へ戻る。どっしりとした重厚感のある構えはどこか凄みを増した。さらに不振時は低めの変化球に空振りを続ける姿も散見されていたが、昇格後はストロングポイントのひとつである選球眼も復活。いわゆる誘い球に手を出さなくなり、25打席で押出しを含む四球を6つももぎ取ることに成功した。
結果、打撃成績は軒並み向上。昇格後は6月10日の試合終了時点で月間打率は.348と打ちまくり、長打率は脅威の.783、OPSも1.265と高い数字を記録。持ち前のパワーが蘇ってきているのだ。
「1軍に上がってきてから感覚は良くなっています」
そう語る本人だが、そこに一切の慢心はない。「まだ自分の中でしっくりきていないところがあるので、その辺は慎重に調整しないと一気に崩れる可能性もあると思います。いい感覚の打席も悪い打席もあるので、その辺も修正しないと」と完全復活に向け、試行錯誤を続けて行くと言い切っている。
筒香に生じていた真剣勝負の場での差異
大村巌野手コーチは「心と身体の調和が取れた」と“V字回復”の要因を一言で表現する。そこには、若き日から筒香に寄り添い、そして一大ブレイクへの礎を作り上げた名コーチならではの分析がある。
「アメリカはスピードもリズムも違うから、帰ってきたときには日本の間に合わせられるようにしないといけなかった。それに合わせるようにと身体も気持ちも頭も、もう一回作っていった。それが今回うまくいっている」
完全復活を期待させた昨季の日本シリーズでの良化を「11月のことでしょ。そこから3か月実戦がないですからね」とキッパリと言い切る大村コーチは、「実戦に近い練習もしてきたけれども、やはり公式戦になると若干違うものがありますから。やってきたことで掴んだんだけれども、まだこれは足らなかったというのは、やっぱり実戦になってみないとわからないことです」と真剣勝負の場で生じる差異の2つがポイントだったと指摘した。
結果が全ての世界にいる。その厳しさを熟知している大村コーチは、春先の2軍降格が愛弟子に与えた影響を説いている。
「1軍にいると『明日も』という気持ちで焦ってしまうから、なかなか時間が取れないんです。それで一回ファームに行ってしっかりと練習してやってきたのが良かったと思いますよ。それで今、50打席ぐらいになって、(結果と内容が)繋がってきていますね。時間はかかりましたけれども、日本仕様に馴染んできましたよ」
筒香が理想の打撃像を形容する際に常々口にする言葉が「分厚い打球」だ。この真意について大村コーチは、「ボールとバットのコンタクトの仕方です。ボールとバットが当たっている時間が長ければ厚い。すぐにボールがバットから離れてしまったら薄いんです」と明快に解説。6月8日の日本ハム戦でバックスクリーンに叩き込みながら本人が「そんなに厚くなかった」と振り返った一打も「薄くてもすごいスピードで物体と物体がぶつかり合えば、ものすごい速度で打球が上がったり回転がかかったり、風に乗りやすくなったりします」と説いた。
たとえ、「薄く」てもスタンドインするパワーはさすがの一語だが、「分厚い打球もでてきました」と本人が語る部分にこそ、今の復調ぶりを示すポジティブなポイントに違いない。
暗黒時代からDeNAを強くしてきた“ハマの大砲”の第二章はいかなる物語を紡ぐのか。ベースボールと野球の狭間の難解なパズルをクリアした時、「完全復活」を上回る飛躍が待っている。
[取材・文/萩原孝弘]
【関連記事】「高校時代から変わってない」のになぜ打てる? 強打者を生んだ名伯楽も認めた“打てる捕手”松尾汐恩の覚醒理由は「ふにゃ」【DeNA】
【関連記事】中日時代に見出せなかった「練習の意味」 名手・京田陽太が“ベンチ”で養った野球観「僕なんかが葛藤とか言っている場合じゃない」【DeNA】
【関連記事】なぜDeNAの助っ人投手たちは“良化”するのか? 背景にあった球団の叡智が凝縮された“独自メソッド”「失敗する未来が、ちょっとわかる」