岩崎はここまで13セーブをマークしている(C)産経新聞社 野球評論家の佐野慈紀氏が現在の野球界を独自の視点で考察する「シ…

 

岩崎はここまで13セーブをマークしている(C)産経新聞社

 

 野球評論家の佐野慈紀氏が現在の野球界を独自の視点で考察する「シゲキ的球論」第2回は好調阪神の救援投手陣にスポットを当てる。

 阪神は6月8日のオリックス戦(甲子園)に8-1と大勝。8日の試合では森下翔太が2戦連発となる10号3ラン、主砲・佐藤輝明が17号の満塁弾を放つなど、猛打爆発。注目された本拠地での「関西ダービー」でスイープを達成するなど、順調に勝ち星を積み重ねている。

【画像】近鉄で中継ぎとして活躍した佐野慈紀氏

 この3連戦で光ったのは投手起用にもある。好投していたルーキー先発左腕の伊原を5回で降板させると6回からは石黒佑弥、7回からニック・ネルソンを相次いで登板させ、課題とする「右の救援」充実に向けて、状態を見極めた。

 結果的に本拠地に帰ってからの3連戦では守護神の岩崎優を使うことなく3連勝。勝負の夏場を見据えて、盤石なブルペン運用を目指す。佐野氏もそんな阪神のブルペンに着目。

 現役時代、中継ぎとして活躍。その経験を元に「リリーバーっていうのは6月の頭が1つの鍵なんです。開幕から飛ばしていると、この時期で息切れしてしまって、そのままダメになるケースも多い。ここを乗り切れるかが大事」と話す。 

 佐野氏は特に不動の守護神・岩崎優に注目しているという。

 4月の防御率3.72、5月は1.69と尻上がりに調子を上げているが「ベテランなんで調整の仕方が分かっている。僕も現役の時は6月はランニングの量を減らすなど、スタミナを維持することを心がけてました」と自身の経験を踏まえ、今後の戦いでは左腕が鍵になると指摘。

 また、かつて佐野氏は岩崎のストッパー適性を見抜いたこともあったという。

 当時の阪神監督を務めた金本知憲氏に意見を求められた際には「絶対にストッパーが合っていると話しました」(佐野氏)。

 理由に関しても「僕がストッパーが合うと判断した理由の1つがストレートの角度ですね。糸を引くようにシューっと伸びてくる直球というのは、回を追うごとに打者の目が慣れてくるという部分もあるんです。制球力は抜群ですし、ストッパーなら持ち味が生きると感じていました」とあえて、短いイニングで力を出し切るほうが向いていると勧めたというのだ。

 岩崎は2013年ドラフト6位でタイガース入団。入団時は先発として新人で5勝を挙げるなど活躍したが、金本監督1年目となる2016年終盤にリリーフ転向を打診された。今季は5月に球団では藤川球児監督以来となる「100セーブ&100ホールド」を達成したことも話題を集めた。日本一となった2023シーズン含め、試合の終盤には欠かせない投手の1人となっている。

 藤川監督率いるタイガースは交流戦に入ってからも順調に貯金を積み重ね、首位を爆走している。

 優勝への道が自身がこだわりを持つ救援運用にあることは間違いない。今後もいかに「勝利の方程式」を構築していくのか、佐野氏も注目していくという。

【さの・しげき】

1968年4月30日生まれ。愛媛県出身。1991年に近鉄バファローズ(当時)に入団。卓越したコントロールを武器に中継ぎ投手の筆頭格として活躍。中継ぎ投手としては初の1億円プレーヤーとなる。近年は糖尿病の影響により右腕を切断。著書「右腕を失った野球人」では様々な思いをつづっている。

 

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