WBCのベルトをかけ、満面の笑みを浮かべた中谷。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext 予期…

WBCのベルトをかけ、満面の笑みを浮かべた中谷。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext
予期せぬ幕上げだった。
6月8日に東京・有明コロシアムで行われたWBC、IBF世界バンタム級王座統一12回戦で、プロボクシングの世界WBC同級王者の中谷潤人は、IBFバンタム級王者の西田凌佑(六島)と対峙した序盤から激しい打ち合いを選択。場内が騒然となり、次第にボルテージが高まる好戦的な戦いに打って出たのである。
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ここまで中谷が序盤、それもゴングと同時にアグレッシブに攻めに出たことはあっただろうか。普段は174cmものリーチ差を活かし、中距離を保ちながら相手の出方を伺うのが、いわば、彼の定石とも言えるスタイルではある。がしかし、今回はそれが一変した。
当然ながら西田の反撃を食らうリスクもあった。それでも中谷はボディやカウンターを打たれようとも前進し続けた。その強引にも見えたが、自身の打たれ強さを見せつけるような戦いぶりに有明のボクシングマニアたちは沸き立った。その反応は目の肥えたファンでさえも「こんな中谷は見たことがない」と思っていたのだと強く感じさせるものだった。
「1ラウンド目からいきなりダメージを与えていくということはチーム内で決めていたことだったので、そこを実行できて。目の腫れだったりとか、腕だったりとか、本当に潰していくというイメージで打っていったんで」
6回終了後に右肩を脱臼した西田の棄権によって決着となった試合後の会見で中谷はそう振り返った。それと同時に「まあ一つサプライズというか、みなさんを驚かせたいというか。エンターテインメント性があったのと、西田選手をあっと驚かすというのは大事になってくると思っていた」とニヤッと笑った27歳は、自身の戦いをガラッと変えた理由を次のようにも説明している。
「西田選手の距離感がとても優れているので、そこでボクシングするよりかは1ラウンド目から崩してやろう、狂わしてやろうというのは僕自身もありましたし、そういう閃きというか、チームの発想は楽しいので、楽しい方を選びました。もちろんダメージを与えていくというのが第1の目的だと思います。結果としてみなさんにサプライズできた」
その指示は、ルディ・ヘルナンデストレーナーをはじめとする陣営の“閃き”によるものだった。おそらく西田側も静かな立ち上がりを予想しているだろうと見込んで、そのギャップを突こうとしたというわけである。
陣営から提案されたアイデアを「楽しそう」と素直に受け入れた中谷。ともすれば、リズムが狂いかねない助言かかわらず、あれだけのハイクオリティーで実行できるのは、見事という他にない。
回を重ねるごとにダメージの色が濃くなっていった西田を「すごく(ダメージを)与えてるっていうのも、外から見受けられたので、そこまで長くはならないだろうなという感覚は持っていた」という彼はこうも続けている。
「3ラウンド目、4ラウンド目が始まる前に肩をこうやって(痛そうに)やってたので。非情ですけど勝つために腕を狙っていきました」
いまだ底知れぬポテンシャルを見せつけた中谷。互いに「価値を高め合おう」と誓った世界スーパーバンタム級4団体統一の井上尚弥(大橋)とのドリームマッチへの機運を高めた“ビッグバン”の成長は、まだまだ止まりそうにない。
[取材・文/構成:羽澄凜太郎=ココカラネクスト編集部]
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