8月31日、W杯アジア最終予選オーストラリア戦で、浅野拓磨(シュツットガルト)は日本をW杯に導くゴールを決め、一躍…
8月31日、W杯アジア最終予選オーストラリア戦で、浅野拓磨(シュツットガルト)は日本をW杯に導くゴールを決め、一躍、時の人となった。代表のメンバーに定着しつつあるフレッシュで希望に溢れた浅野の活躍は、少し大げさに言えば日本代表の明るい未来と世代交代を感じさせた。
とはいえ、オーストラリア戦はピンポイントの活躍にすぎない。浅野には次のレベルへのステップアップと継続的な活躍が求められる。22歳にそれは決して求めすぎではないはずだ。だが、日本代表の10月の2試合では満足な結果を残したとは言えず、モヤモヤを抱えたまま、ドイツに戻った。
ブンデスリーガ再開初戦となるケルン戦、浅野はベンチで90分間を過ごした。他のゲームより早い金曜日開催だったこともあり、コンディションを考慮されたのかと尋ねると、「いや、それは関係ないと思います」と答えた。確かに対戦相手、ケルンの大迫勇也はフル出場している。

ケルン戦は出場機会がなかった浅野拓磨(シュツットガルト)
今季の浅野はシュツットガルトでのレギュラー争いで苦戦している。第9節まで先発は2回でフル出場は1回、途中出場4回。キッカー誌による採点の平均も4.25とチームワーストから2番目だが、そもそも一定時間出場しないと採点対象にならないため、対象試合は2試合しかない。
「自分は今、これくらいのラインなので。試合に出られるかどうかよりも、メンバーに入れるかどうかという激しい競争の中にいるので、危機感をすごく感じますね。(ケルン戦では)途中から入ったシャドラック(・アコロ)も点を決めましたし、ポジションがかぶっている選手がああやっていいプレーをするというのは、刺激になる反面、緊張感だったり危機感もすごく感じる。コツコツやるしかないなと思います」
課題だと感じるのは、逆境におけるメンタリティだと話す。
「チームでもなかなか試合に出られてなくて、代表に行ってもなかなか結果がついてこない状況の中で、メンタルの部分をいい方向に保ち続けるというのが、難しいひとつの課題だなと感じています。なかなか今みたいな経験もサッカー人生のなかでしてきてなかったので。
去年、2部のリーグのときもちょっと感じていましたけど、チームの中に結果を出している選手がいて、自分がそうじゃないというのは、あまりしたことない経験なので、そこのメンタリティのキープの仕方というのを今は模索中というか……。練習からいいプレーをするメンタリティというのを探している途中ですかね」
若手として活躍していたサンフレッチェ広島時代や、昨季、新加入したシュツットガルトの2部時代は、無心に結果を追いかけていればよかった。だが、今は新加入選手の活躍を肌で感じながら結果を出さなくてはならない。ジャガーポーズと明るい笑顔がトレードマークの浅野だが、苦しさを感じているようだ。
この日、シュツットガルトは90分に劇的な勝ち越しゴールが決まり、勝利をものにした。スタジアムは歓喜に沸き、ベンチもピッチ上も一体となって喜んでいるように見えた。
「終盤、なかなか流れがよくなかった中で、ワンチャンスを最後の最後でものにできてるというのは、チームとしてはすごくいい状況じゃないかなと思います」
だが、続いて漏れてきた言葉は、浅野の複雑な心境を感じさせた。
「まあ、あの瞬間は素直にうれしかったですけど、喜びは自分はなかったかなと思います」
それは自分の状況によるものなのか?
「そうですね。チームとしても勝利が一番ですし、そこにうれしさはありましたけど、素直に喜べてはいなかったかなと思います。それは当たり前のことだと思います。でも、チームが勝っているのに嬉しくないかと言われると、そうではないので……」
うれしいけど、うれしくない。モヤモヤとしたものが残った。幸い、今季のシュツットガルトはメンバーをさほど固定せずに試合を行なっているから、チャンスは間違いなくやってくる。浅野自身が言うように、コツコツと練習で信頼を得て、試合で結果を積み重ねるしかない。