◇国内メジャー第2戦◇BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ 最終日(8日)◇宍戸ヒルズCC西コース(茨城)◇予…

「記憶にない」というウィニングパット。蝉川泰果が復活Vで日本タイトル3冠を達成した

◇国内メジャー第2戦◇BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ 最終日(8日)◇宍戸ヒルズCC西コース(茨城)◇予選ラウンド7397yd(パー70)、決勝ラウンド7430yd(パー71)◇曇り(観衆6055人)

蝉川泰果の実力を、終盤の難関ホールであらためて示す逆転劇だった。1打ビハインドで迎えた、この日3番目の難度の最終18番。6mのバーディパットを決めてガッツポーズを2度繰り出し、堀川未来夢とのプレーオフへ。同じ18番で行われた1ホール目で、2mを決める“連続バーディ”。2年ぶりとなるツアー通算5勝目をメジャーで飾り、「まだ夢なのかな、と思うくらいウィニングパットの記憶がない。うれしい気持ちでいっぱい」と充実感に浸った。

アマチュアで制した2022年「日本オープン」、23年「ゴルフ日本シリーズJTカップ」に続き、日本人では2018年の小平智以来7年ぶりとなるツアー史上14人目の『日本タイトル3冠』を達成。24歳148日は、尾崎将司の27歳248日を更新する最年少記録となった。王手をかけてから4回目の挑戦でツアー史にその名を刻み、「このコースが一番、難しいと思っていたのでメチャクチャうれしい」と喜んだ。

1打差3位から出た最終組での戦いは、メジャーの優勝争いにふさわしい熱戦だった。2打差に離された前半2番(パー5)では、約30ydの3打目を直接カップに沈めるチップインイーグル。強めに低く放ったボールは1バウンドし、カップに“ガシャン”と吸い込まれた。

最終18番で6mのバーディパットを決めてプレーオフへ

堀川、米澤蓮と首位に並んでサンデーバックナインに向かったが、15番(パー5)をパーとした時点で再び2打のビハインドを負う。しかし、ここからが勝負強さを発揮してきた24歳の真骨頂。16番(パー3)の1打目を1mに絡めて1打差に詰め寄ると、勝利を引き寄せる最終18番のバーディフィニッシュにつなげた。

歓喜の4カ月前は「絶望だった」というどん底にいた。来季PGAツアー出場へ意気込んで臨んだ2025年シーズンは、思いもしないハプニングで挫折を味わう。2月の米下部コーンフェリーツアー第4戦を棄権した1カ月後に、左背中側の肋骨3本の疲労骨折が判明した。

「リシャッフル(成績に応じて優先順位を組み替える制度)を絡めて、4月もコーンフェリーを主戦場にしたかった」という目標とともに、ポイントランキング上位でPGAツアーに昇格する夢が早々に断たれ、「悔しい気持ちでいっぱい」のまま志半ばで帰国した。

プレーオフでは左バンカーからの2打目をピンに絡めて決着をつけた

静養に努め、リハビリを続けて5月の「中日クラウンズ」でツアー復帰。「復帰から4試合目で、まさかツアー選手権で勝てるとは思っていなかったので、うれしい気持ちでいっぱい」と笑顔があふれる。

「メジャーは、勝ちたい気持ちがより強くなる大会。来年は『日本プロ』を獲りたい」という言葉にも自信がこもる。ツアー選手権が創設された2000年以降、片山晋呉しか達成していない現行の日本タイトル4冠へ。今週の復活劇は、さらなる快挙へのリスタートだ。(茨城県笠間市/塚田達也)