まず、現地時間10月13日にヒューストンで行なわれた、ア・リーグ優勝決定シリーズ第1戦に先発したヤンキースの田中将大の…
まず、現地時間10月13日にヒューストンで行なわれた、ア・リーグ優勝決定シリーズ第1戦に先発したヤンキースの田中将大のピッチングが、極めて上質だったことを記しておきたい。

6回2失点と好投するも、敗戦投手となった田中
得点、チーム打率が高いアストロズの強力打線を相手に、6回を4安打1四球2失点。重圧のかかるシリーズ初戦の先発投手として、打者有利のミニッツメイド・パークでこの内容ならば十分に合格点である。『FOX SPORTS1』でヤンキースvsアストロズ戦の解説を務めたジョン・スモルツも、「田中はこのスタジアムで凄い仕事をしている。スプリットに頼ることなく、速球とスライダーで打者を攻めることができている」と絶賛していた。
現役時代に通算213勝、154セーブを挙げたスモルツの言葉通り、田中は”伝家の宝刀”スプリットに依存せず、キレのいい真っ直ぐとスライダーを多投した。アストロズの主力に右打者が多かったことに加え、相手の裏をかく意図もあったのだろうが、94マイル(約151km)前後の速球と、きれいに横滑りするスライダーを中心とする投球からは”本格派”の雰囲気が漂った。
ヤンキースの”救世主”となった地区シリーズ第3戦も含め、今プレーオフでは計13イニングで2失点のみ。シーズン中まで遡れば、過去8試合中6戦を2失点以下に抑えてきた。今シーズンは波の激しさばかりが指摘されたが、ここにきてベストに近い状態を保っている。
ただ……田中の頑張りは見事だったが、それでもヤンキースは勝てなかった。田中は4回1死までを無安打に抑えたものの、その後、ホセ・アルトゥーベ、カルロス・コレア、ユリエスキ・グリエルの3本の単打でアストロズが2点を先制。この4回にすべての得点を奪い、第1戦はア・リーグ中地区の王者が2-1で先勝した。
2009年以降ではメジャー最多となる、シーズン896得点を叩き出したアストロズ打線。18本塁打以上の選手が7人というパワーが特筆されがちだが、三振率17.3%がメジャーで最も低い数字であることも忘れてはいけない。今シーズン178回3分の1で194三振を奪った田中相手にも3三振しか喫せず、こつこつとバットに当て、4回裏は数少ない失投も見逃さなかった。
特に、ア・リーグMVP 候補筆頭と目されるアルトゥーべの魅力が遺憾なく発揮されたゲームでもあった。2年連続で24本塁打以上を放ち、6年連続30盗塁以上を達成してきた27歳のベネズエラ人は、快調なピッチングを続けてきた田中から4回にチーム初安打。すかさず盗塁を決め、コレアのレフト前タイムリーを誘発した。
メジャーの現役選手の中で最も背が低い選手でありながら、走攻守すべてを兼ね備えた”小さな巨人”。今シーズン、打率.346、24本塁打、32盗塁をマークしたアルトゥーベは、この日の3安打も含め、ポストシーズン突入以降は19打数11安打、3本塁打、1盗塁と絶好調が続いている。
今が旬のアルトゥーベ率いるアストロズ打線を、1試合を通じて封じ込めるのは並大抵のことではない。そのラインナップは、ヤンキースが地区シリーズで打ち破ったインディアンスよりも一枚上。柔軟性を兼ね備えたアストロズは、今後もヤンキース投手陣を悩ませ続けそうだ。
田中と投げ合ったアストロズの”左腕エース”ダラス・カイケルは、7回を3安打無失点に抑えて勝利の立役者になった。この試合で、ヤンキース相手にはシーズン中も含めて通算57回3分の2で防御率1.09と、圧倒的な相性の良さを発揮している。
カイケルは、2015年のワイルドカードでアストロズがヤンキースを2-0で下した試合でも勝利投手になっており、プレーオフでのヤンキース戦では2戦2勝(合計13イニングを投げて無失点、17奪三振)。2年前のゲームでも、敗戦投手になったのは5回2失点でマウンドを降りた田中だった。結果的に、田中は大舞台で相手エースに2度続けて投げ負けたことになる。
繰り返すが、13日の田中の投球内容は胸を張っていいものだった。打線の援護次第で勝ち負けが語られてしまうのは、不公平な感じは否めない。ただ、この時期は内容よりも”Win”か”Lose”かが重視される。同じ相手に連敗したことで、「カイケルは、田中がプレーオフで投げ勝たなければいけない”因縁の投手”となった」という見方もできるのだろう。
ヤンキースが4連敗すればそこで戦いは終わるが、ローテーション通りだと、田中の次の先発予定は19日の第5戦。ここで再びカイケルと投げ合うことになった場合、地区シリーズ第3戦と同様にミスがほとんど許されないマウンドになる。自軍打線が苦手とするサウスポーを上回るだけのピッチングをすることが、田中に課される次のミッションと言える。
ア・リーグの大本命インディアンスを劇的な形で下したヤンキースの士気は、アストロズに1敗したくらいで下がることはあるまい。しかし、今シリーズで田中が2連敗を喫するようなことがあれば、ヤンキースのワールドシリーズ進出は遠のく。そういった意味でも、地元に戻って迎える第5戦は、背番号19にとって再びの”大勝負”となるだろう。