サッカー日本女子代表がブラジル女子代表と対戦し、2連敗を喫した。日本と時差のあるアウェイでの連戦という厳しい環境だった…

 サッカー日本女子代表がブラジル女子代表と対戦し、2連敗を喫した。日本と時差のあるアウェイでの連戦という厳しい環境だったことを差し引いても、連敗という事実は揺るがない。そこから何が見えたのか。サッカージャーナリスト後藤健生が、なでしこジャパンの「現在地」、そして、今後の「光明」を探る!

■光明は「裏に抜けられたこと」

 ただ、日本チームにとって光明が見えたとすれば、押し込まれてはいたものの、攻撃を仕掛けた場面では、それほど苦労せずに裏に抜けられたことではないか。

 第1戦は後半立ち上がりに3点目を奪われた時点で勝敗は決していたが、その後は双方がメンバー交代を繰り返す中で、少しずつ反撃の形も作れるようになっていった。そして、終了間際の88分には、中盤でこぼれ球を拾った宮澤ひなたがすぐに前線にボールを送り、これを受けた清家貴子がドリブルで持ち込んで、シュートを決めて1点を返すことに成功した。

 日本は内容的には圧倒された試合だったが、前半には田中美南の幻の先制ゴールがあり、65分には左サイドの北川ひかるのクロスが相手のハンドを誘ってPKも獲得している(長野風花が蹴って失敗)。

 数少ないチャンスではあったが、攻撃を仕掛けたときにはかなり崩せていたのだ。

 ブラジルは、攻撃力や前線でのプレッシングという面では日本を圧倒したが、最終ラインの守備では日本の攻撃に対処できていなかった。

 第2戦では、初戦からの教訓を生かし、日本もブラジルの激しい当たりに対して一歩も引かずに応戦し、互角の試合となった。

 8分には藤野あおばがドリブルで仕掛けてシュートを放つチャンスがあり、その後はブラジルにボールを握られ、再三CKを与える苦しい時間が続いたが、守備陣が体を張って守り、決定機はつくらせずにしのぐ。

 そして、28分に中盤でこぼれ球を拾った松窪真心が籾木結花につなぎ、籾木の縦パスを田中がワンタッチで落として、松窪が抜け出す決定機を作る。松窪のシュートはGKにブロックされて再び松窪の足元に転がったが、松窪はこれをシュートすることができなかった。

 そして、その後、右サイドの清家が立て続けに決定機を作った。だが、29分には右下隅へのシュートをGKに防がれ、さらに31分にはGKまでかわしたものの、シュートは枠を捉えることができなかった。

■「手を焼いた」パワーとスピード

 しかし、後半に入って1分もたたないうちに、清家は2試合連続ゴールを決める。

 籾木、藤野、松窪らが角度を付けたパスをテンポ良く回して作ったチャンスで、最後は藤野がアウトサイドを使ったお洒落なパスを通して、走り込んだ清家がついに決めて日本が先制した。

 ただ、54分にはCKからのボールを競り入ったGKの山下杏也加も触れず、抜けてきたボールが石川璃音に当たってゴールに転がり込み、オウンゴールという形で同点となってしまう。早いタイミングで同点となったことで、ブラジルに勢いを与えてしまった。

 その後も、日本は清家のシュートがゴールポストを叩く場面もあり、互角に戦っていた。だが、78分、CKのチャンスからカウンターで仕留められてしまう。

 この連戦で何度もやられていたケロリンのスピード・ドリブルを止めることができず、交代で入ったばかりの若いジョンソンに決められてしまったのだ。

 2戦目では、コンディションもだいぶ回復して、互角の戦いができた。決定機は何度もあり、せめてその半分でも決めきることができれば勝利できたに違いない。

 だが、ブラジルのパワーとスピードに(もちろん、テクニックにも)手を焼いたことも事実だった。

 あのスピードあふれる攻撃をどうやって止めるのか?

■「見せてほしい」現実的な戦い方

 長期的には、パワーとスピードのある選手を育てていかなくてはならない。

 日本の女子選手にも、パワーのある選手は増えてきている。攻撃面では、推進力が売り物の清家貴子が2戦連続でゴールを決めたし、守備面でも髙橋はなや石川璃音、古賀塔子は強さのあるDFだ。ニールセン監督は千葉玲央海菜を2戦連続で左サイドバックで起用したが、彼女も強さでは負けない選手だ。

 ちなみに、清家、髙橋、石川はいずれも浦和レッズレディースの選手だ(清家はその後、イングランドのブライトンに移籍)。

 浦和が、楠瀬直木監督(新シーズンから日テレ・東京ベレーザの監督)の下、パワーを生かしたサッカーに取り組んできた成果と言ってもいいだろう。

 ただ、やはり日本には体の小さな選手が多いことも事実だ。

 そうした選手を使ってパワーやスピードで上回る相手に勝つには、やはり組織的な守備が必要となる。

「攻守両面で主導権を握る」というニールセン監督のやり方は、たしかに理想を求めたものだ。だが、サッカーには相手があるのだから、どんな相手にも常に主導権を握り続けることなどできるはずはない。

 そういう劣勢の展開になったときに、どのように守ってしのぐのか……。そうして、現実的な戦いも見せてほしいものである。

 なでしこジャパンの次の対戦相手はワールドカップ・チャンピオンのスペインである(6月27日)。相手に取って不足なし。同時に、スペインは2023年のワールドカップでは組織的守備で封じ込めた相手でもある。ニールセン監督には、そろそろ“勝ちにこだわった”采配も見せてほしいものだ。

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