宮崎県延岡市出身で大相撲の元幕内琴恵光の尾車親方(33)=本名・柏谷充隆さん=が5月31日、東京・国技館で断髪式を行っ…

 宮崎県延岡市出身で大相撲の元幕内琴恵光の尾車親方(33)=本名・柏谷充隆さん=が5月31日、東京・国技館で断髪式を行った。師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)の止めばさみで、大銀杏(おおいちょう)を落とされた。

 同市出身の五輪競泳メダリスト松田丈志さんや河野俊嗣知事ら約6千人が参加した。

 河野知事はあいさつで、優勝力士に宮崎牛を毎場所1頭分贈呈していることを紹介。琴恵光関に贈るのが県民の夢だったとした。「その夢はかなわなかったが、親方として郷土出身力士を育てて、その力士に宮崎牛を贈呈する新しい夢を手にした」と述べた。

 尾車親方は「17年間共にたたかってくださった皆様ありがとうございました。この土俵から見る景色は一生の宝物です」と感謝した。

 最後の一番では同じ部屋の弟弟子にあたる大関琴桜と対戦。投げで勝った。琴桜は「現役を続けてもらいたかった」と残念がった。

 2001年に亡くなった祖父の邦治さんは、松恵山(まつえやま)のしこ名で十両まで昇進した元力士。その名を冠した地元の道場に通い、小学4年でまわしを締めた。

 15歳で初土俵を踏んだ当時、94キロ。出世は順調でなかった。テクニックはあり、親方や兄弟子から教わった技術を実践する器用さもある。しかし、大きな力士の馬力にはかなわない。

 「小さな体でどうすれば勝てるか、恵光は常に考え、工夫をしていた」。部屋でしのぎをけずった同学年の荒磯親方(元関脇琴勇輝)はそう振り返る。

 食事では、ご飯をラーメン丼にしゃもじで押しつけてよそい、「『まんが日本昔ばなし』に出てくるような山盛り」(荒磯親方)で食べた。

 トレーニングでは、「ウォーターバッグ」や「ケトルベル」といった当時は目新しかった器具を探して、採り入れた。

 体を大きくするとともに、磨いたのが「しゃくり」の技術だ。両腕を浅く差した後、体を揺すって相手に密着する。うまく懐に入れれば、大きな力士とも渡り合えた。

 14年九州場所で、宮崎県出身力士では32年ぶりの新十両昇進を果たした。18年名古屋場所で新入幕。宮崎では元関脇栃光(入幕時は金城)以来44年ぶりで、祖父の番付も上回った。祖父の元十両、松恵山も支えだったという。「いつも祖父といっしょに土俵に上がっているような気持ちだった」

 断髪式は母の誕生日と重なった。「なかなか番付が上がらず思い悩む時期もあった。支えてくれたのは家族だった」。妻の由香利さんへも「どんなときも私の気持ちを穏やかにしてくれる存在。たくさん我慢させてきたが、これからは少しでも恩返ししたい」と話した。(伊藤秀樹、鈴木健輔)