10月10日、つまりオランダvs.スウェーデンの試合があった日のフォルクスクラント紙には、「ノキアの3310とオラ…
10月10日、つまりオランダvs.スウェーデンの試合があった日のフォルクスクラント紙には、「ノキアの3310とオランイェ(オランダ代表の愛称)の4-3-3を比較する」という記事が掲載された。「3310」とは、世界中で愛用された携帯電話の名機種のこと。「4-3-3」とは、オランダサッカーの代名詞とも呼べるフォーメーションだ。

W杯予選敗退後、ロッベンは代表引退を表明した
「オランダサッカーの凋落とノキアの没落は、驚くほど似ている」。フォルクスクラント紙はそう主張するのである。
2008年の第1四半期、携帯電話におけるノキア社の世界マーケットシェアは46.7%にも及んだのだという。それが2013年の第2四半期には3.2%まで落ち込んでしまった。一方、オランダ代表のFIFAランキングは2008年に3位だったのが、今年になって29位まで落ちてしまった。
サッカー界にもビジネスの世界にも詳しい元ズヴォレ会長のガストン・スポーレ氏は、「ノキアの3210、3310、6610は、オランダサッカー界のフリット、ファン・バステン、ライカールトのようなものだ」と皮肉るようにコメントしている。
オランダ、そしてノキアのあるフィンランドは、欧州のなかの小国だ。「ホーラント・スホール(オランダ派)」と命名されたオランダ独自の攻撃サッカーは、すでに相手チームにとっては対策の練りやすいオールドファッションなスタイルになってしまった。ノキアはi Phoneやアンドロイド勢の力を過小評価し、独自のOSにこだわって危機に陥った。
小国のサッカー/通信端末会社が技術革新の潮流に負けてしまったのだ。
話をオランダサッカーにフォーカスする。危機的状況なのは、代表チームだけではない。アヤックス、PSV、ユトレヒトがヨーロッパリーグ予選・プレーオフで敗れ、現在ヨーロッパの舞台に残っているのは、チャンピオンズリーグのフェイエノールトと、ヨーロッパリーグのフィテッセのみ。ちなみにこの2チームも、いまだ勝ち点ゼロだ。
かつてオランダサッカー界には、「暗黒の80年代」と呼ばれた低迷期があった。1982年ワールドカップ、1984年ヨーロッパ選手権、1986年ワールドカップと3大会連続でビッグイベント出場を逃してしまった。
しかし現在、オランダでは「80年代より今の状況のほうがひどい」と言われている。当時のオランダはルート・フリット、マルコ・ファン・バステン、フランク・ライカールト以外にも、ジェラルド・ファネンブルグやクーマン兄弟といった将来のスター候補たちが育っていたのだ。それが1988年に花開くと、PSVがチャンピオンズカップを獲得し、オランダ代表がユーロを制した。その30年前と比べると、今のオランダの中堅・若手選手たちはかなり心もとない。
チャンピオンズリーグもヨーロッパリーグも勝てなくなった。国民的なスター選手もいない。それでも、オランダリーグのスタジアムはかなり埋まっている。フォルクスクラント紙の記事では、こうした状況についてガストン・スポーレ氏が「オランダにはすばらしいスタジアムがある。かなり多くの試合が満員になる。おかしなリーグだ」とコメントしていたほどだ。
オランダリーグには国民を熱狂させるような「ナショナルスター」はいなくとも、おらがクラブの「ローカルヒーロー」がいる。アヤックスのMFラセ・シェーネ(31歳)、PSVのFWイルビング・ロサノ(22歳/メキシコ代表の彼だけはスーパースターになりそうな例外的なタレントだ!)、フェイエノールトのMFイェンス・トールンストラ(28歳)、ADOデン・ハーグのDFトム・ブヘルスダイク(27歳)と、その土地土地(とちどち)には地元のファンから愛されるローカルヒーローが活躍しているのだ。
残念ながら、オランダ代表と同様に今のオランダリーグのチームには、横パスやバックパスを多用する「ポゼッションを目的としたポゼッションサッカー」が横行している。しかし、NRCハンデルスブラット紙が「悪いフットボールも、同じくフットボールだ。フットボールにはドラッグのような中毒性がある」と書いたように、オランダ人の足がスタジアムから遠ざかることは決してないのである。
10月10日、ワールドカップ欧州予選グループA3位のオランダはスウェーデンに2-0で勝利し、勝ち点19で並んだものの、開いた得失点差(スウェーデン=+17、オランダ=+9)は埋めようがなく、ロシア行きのミッションに失敗してしまった。長らくオランダサッカーを引っ張ってきたFWアリエン・ロッベン(33歳/バイエルン)が代表を引退し、ディック・アドフォカート監督は11月の親善試合を最後に去ることになるだろう。
オランダの公共放送NOS局が次期監督候補として名を挙げたのは、トーマス・トゥヘル(前ドルトムント)、ロナルド・クーマン(エバートン)、フランク・デ・ブール(前クリスタル・パレス)、ジョバンニ・ファン・ブロンクホルスト(フェイエノールト)、エリク・テン・ハーフ(ユトレヒト)の5人だ。
選手のなかに「スーパースター、ロッベン」を引き継ぐような人材は、今のオランダにはいない。しかし、「リーダー、ロッベン」を継ぐ者は表れてほしいところだ。
多くの人々は、MFケヴィン・ストロートマン(27歳/ローマ)、MFジョルジニオ・ワイナルドゥム(26歳/リバプール)、DFデイリー・ブリント(27歳/マンチェスター・ユナイテッド)、DFステファン・デ・フライ(25歳/ラツィオ)などに「新リーダー」の期待をかけた。だが現在、彼らはいずれも「リーダーの器ではなかった」と失望されている。今、もっとも「新リーダー」として期待を集めているのは、サウサンプトンのDFフィルジル・ファン・ダイク(26歳)だ。
「ファン・ダイクはすでにディフェンスリーダーになった」(フォルクスクラント紙)
新監督は誰になるのか、そしてファン・ダイクがロッベンを継ぐリーダーになれるのか――。新生オランダ代表の道のりは険しいが、優れたサッカーインフラと常に変わらぬサッカーへの愛をベースに、この困難な局面を乗り越えていってほしい。