岩嵜は厳しい台所事情を助ける存在になれるはずだ(C)産経新聞社 中日・岩嵜翔が金銭トレードでオリックスに移ることとなった…

 

岩嵜は厳しい台所事情を助ける存在になれるはずだ(C)産経新聞社

 

 中日・岩嵜翔が金銭トレードでオリックスに移ることとなった。プロ18年目のベテランリリーバーがなぜシーズン途中に移籍したのか考察したい。

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■中日側の視点:岩嵜の余剰戦力化と急を要する野手補強

 そもそも貴重なリリーバーをなぜ放出できるのか。それはブルペン陣の充実にある。

 クローザーの松山晋也を軸に、清水達也やジュニオル・マルテ、(今は離脱中だが)齋藤綱記が勝ちパターンを担い、藤嶋健人や橋本侑樹といった実力者も控える。さらに、勝野昌慶が160キロをマークするなど進境著しい。かつてのタイトルホルダー祖父江大輔や福敬登がビハインド時に登板することもしばしばだ。

 岩嵜は開幕直後に移籍後初勝利を挙げるも、その後は徐々に序列が下がり、4月末からはファーム暮らしが続いていた。2軍戦では格の違いを見せていたが、なかなかお呼びがかからない状況で「余剰戦力化」していた。

 また、金銭トレードで考えられるのは、単純に交換相手の折り合いがつかなかったこと、そして急を要する補強が控えることだ。後者について考えると、打者の補強ないし補充を想定しているのではと思われる。そのために枠を空けたということだ。
 
 慢性的な得点力不足に加え、細川成也の離脱や外国人選手の不振、極め付けは復帰してばかりの福永裕基が左手関節骨折で再び長期離脱。打てる選手が1人でも欲しい状況だ。外国人を獲得するのか、それとも育成選手の昇格か。今後の動きに注目したい。

■オリックス側の視点:ブルペン拡充の裏に大量のTJ手術敢行

 対するオリックスはなぜ岩嵜を必要としたのか。もちろんブルペンの拡充が主たる目的だろうが、背景には多くの救援陣がトミー・ジョン手術(TJ手術)を敢行している点がある。

 今年だけで吉田輝星、宇田川優希、小木田敦也、東山玲士、前佑囲斗の5人がTJ手術を受けている。一般的にTJ手術は実戦復帰まで1年半程度かかるので、「今季絶望」の投手を5人も抱えているのだ。特に吉田、宇田川、小木田は昨季まで多く稼働していたため、チームが受けるダメージは少なくない。

 実際、救援防御率4.54はリーグワーストの数字。ルイス・ペルドモ、アンドレス・マチャドの両外国人と阿部翔太は奮闘しているが、昨季ブレークした古田島成龍、左の山田修義、剛腕の山﨑颯一郎は軒並み数字を落としている。

 TJ手術歴があり、10月で36歳になる岩嵜にフル回転を望むのは酷な話ではあるものの、現状では中日に比べて働き場所は多くなるはず。4シーズンぶりのパ・リーグでもうひと花咲かせてもらいたい。

[文:尾張はじめ]

 

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