J1前節の第18節で、大波乱が起きた。7連敗中の最下位・横浜F・マリノスが、7連勝中の首位・鹿島アントラーズに勝利した…

 J1前節の第18節で、大波乱が起きた。7連敗中の最下位・横浜F・マリノスが、7連勝中の首位・鹿島アントラーズに勝利したのだ。最下位チームの逆襲は、どんな今後を示すのか。サッカージャーナリスト後藤健生が、「波乱の一戦」を徹底検証する!

■「反転攻勢」が始まる?

 さて、この鹿島戦の勝利は再現性があるものなのだろうか? つまり、この勝利をきっかけに横浜F・マリノスの反転攻勢が始まるのだろうか?

 もちろん、これだけ出遅れてしまった以上、横浜FMが優勝争いに絡むことは不可能だろう。だが、降格圏脱出は当然として、中位にまで順位を上げることは十分に考えられる。なにしろ、J1リーグは空前の混戦なのだ。ちょっとした連勝で、順位は上がる。

 そして、横浜FMはもともと実力があるチームなのだから、彼らが“目を覚ませば”上位チームに脅威を与えることもできる。いわゆる“優勝争いの目”になる可能性もある。

 そういう意味で、鹿島アントラーズが横浜FMの目を覚まさせてしまったとしたら、これから対戦するチームにとっては、はなはだ迷惑なことだろう。

 ちなみに、横浜FMは5月31日の第19節でFC町田ゼルビアと対戦してから代表ウィークの中断に入る。結果を出したことで心理状態が上向いた状態で中断に入れれば、この間にしっかりとトレーニングをすることでパトリック・キスノーボ監督は自らの戦術を落とし込むことができるかもしれない。

 なにしろ、スティーブ・ホーランド前監督解任後、急きょ指揮を執ることになったキスノーボ監督だが、すぐにACLE決勝大会があり、帰国後は連戦で、しっかりトレーニングする時間がなかなか取れなかった。横浜FMにとっては、非常にありがたい中断期間となるはず。

 この中断期間の使い方こそが、今後の横浜FMの運命を決めると言っても過言ではないだろう。

■「思わぬ敗戦」の問題

 では、鹿島にとっては、この「思わぬ敗戦」はどのような影響をもたらすのだろうか?

 僕は、ほとんど問題はないと思う。

 たしかに、横浜FM戦の鹿島は攻守ともに、とくに守備面で軽いプレーが目立った。原因は、やはり勝利を続けていたことによる気の緩みだったのではないだろうか。

 リーグ戦は間もなくシーズンなかばを迎えようとしているこの時期、疲労の影響もあっただろうが、今シーズンの鹿島はACLの負担もなく、連戦が続いたわけではない。連戦といえば、ACLE帰りの横浜FMのほうが連戦続きで疲労度ははるかに高かったはずだ。

 ケガ人の影響ももちろんあっただろうが、ケガ人の問題はどのチームも抱えている。それこそ、横浜FMに比較すれば、鹿島はメンバーが揃っていると言ってもいい。

 そんな中で、鹿島のパフォーマンスが落ちてしまったのは、やはり心理的影響以外に考えられない。

 もちろん、プロとして「あってはならないこと」なのかもしれないが、プロとは言っても人間がやっていることだ。長いシーズンを戦う中では、心理的な緩みによる「谷間の試合」というのが、どんな強豪チームにも必ず存在する。

■何度も見てきた「光景」

 首位が続いていて、しかも2位との勝点差が開いているという状況。間もなく中断期間に入るというスケジュール。そして、対戦相手の横浜FMが最下位に沈んでいること……。

 そんなさまざまなファクターが重なって、小さな緩みが生まれた。それが、鹿島にとっての横浜FM戦だったのではないだろうか?

 そうだとすれば、これを教訓にすればいいだけのことだ。本来の鹿島らしい攻守の粘り強さや勝負へのこだわりを取り戻しさえすれば、すぐに本来の形に戻れる。

 鹿島にとって幸いだったのは、2位との勝点差があったこと。そして、鹿島の敗戦に付き合うように、上位陣が軒並み引き分けや負けに終わったため、勝点差があまり縮まなかったことだろう。

 本来は高いチーム力を持つチームが諸事情で低迷しているようなとき、強豪チームとの対戦が立ち直りのきっかけになること。そして、首位を走っているチームが、最下位相手の試合などでついつい緩みが出てしまうこと……。それは、全世界の長いフットボールの歴史の中で、何度も見てきた光景である。

 だから、僕は冒頭に「“フットボールあるある”満載の試合」と表現したのだった。そこから逆襲の火の手が上がるのか、あるいはそれが没落の兆しとなってしまうのか……。それはすべて、それぞれのチームの今後の戦い方によって決まってくるはずである。

 横浜FMと鹿島の次戦を見届けよう。

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