4月中旬の平日、東京都中央区にある人工芝のフットサルコートを訪れると、15人ほどの小中学生がボールを追いかけていた。 …
4月中旬の平日、東京都中央区にある人工芝のフットサルコートを訪れると、15人ほどの小中学生がボールを追いかけていた。
「パス、ちょうだい」
声を掛け合い、PKを決めた女の子が両手を上げて喜ぶ。みんなで運動を楽しもう。そんな空気が流れていた。
このイベントが開かれたのは、学校では授業が行われている昼間の時間帯。主催したのは、不登校の小中学生を対象にしたフリースクール「NIJINアカデミー」だ。コートを所有するサッカースクールと提携し、4月から毎週火曜日に教室を開いている。
NIJINアカデミー代表の星野達郎さんは「不登校の子どもの課題の一つが運動不足。うまい、へたを気にするのではなくて、楽しむことを大事にしたい」と話す。サッカースクールにとっても、利用者の少ない平日昼間にコートを有効活用できるメリットがある。両者の思惑が一致し、始まった取り組みだった。
この日は体験会。参加した小学3年生の少年は、昨年の1学期途中から集団活動になじめず不登校になり、昨夏からNIJINアカデミーに通い始めた。
サッカーは好きだが、普段は父親と近くの公園でボールを蹴るくらい。「みんなと遊べるのがうれしい」。懸命にドリブルする姿が印象的だった。
昨年末から、「不登校とスポーツ」をテーマに取材をしている。関係者に話を聞くなかで、不登校の子どもたちが運動を楽しむために、関わる大人が気をつけなければいけない点があると感じている。
一つは、技術を比較しないこと。
学校ではカリキュラムに沿って体育の授業を進めなければいけないため、どうしても、何ができて、何ができないかという視点で評価してしまうことが多い。
自己肯定感が低くなりがちな不登校の子どもたちを、他人と比べられるストレスから解放することが必要だ。
もう一つが、強制しないこと。
星野さんは「どん底に沈んでいる時期に『運動しろ』というのは無理。人と会うことが怖くなくなり、自分を取り戻してきたタイミングで運動することにより、ポジティブな感情が生まれればいい」と語る。
実際、気持ちが前向きになっていく「回復期」に運動が有用だという調査もある。子どもが興味を示した時に、そっと背中を押してあげられるくらいがいいのだろう。
NIJINアカデミーでは仙台市で体操教室と連携するなど、さまざまな活動を全国各地で展開していく予定だという。学校の外でも、子どもたちが気軽に運動に取り組み、楽しむことができる。そんな機会が増えていくことを願いたい。(岩佐友)