東日本大震災の後、復興の進められている宮城県沿岸部を舞台にした『東北・みやぎ復興マラソン2017』。前回は、実際にランナーの走ったコースの様子についてご紹介しました。フラットで走りやすいコースは、シーズン最初の力試しにも良かったのではない…
東日本大震災の後、復興の進められている宮城県沿岸部を舞台にした『東北・みやぎ復興マラソン2017』。前回は、実際にランナーの走ったコースの様子についてご紹介しました。フラットで走りやすいコースは、シーズン最初の力試しにも良かったのではないでしょうか。
しかし本大会の魅力は、それだけではありません。やはり震災によって被害を受けた地域の“今”を見ながら走ること。そして、復興を願い取り組まれている現地の皆さんとの交流こそ、最大の魅力といえるでしょう。今回はコース上で目にした光景、そして人々の温かな思いにスポットを当ててご紹介します。
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走りながら被災地の“今”を知る
スタート直後に走る整備された道路は、震災後に新設されたもの。この道路は標高5m前後あり、防波堤の役割も果たすそうです。“かさ上げ道路”と呼ばれ、津波による被害を受けたことにより、その被害を防ぐべく作られました。
そして約15km地点から現れるのが海岸線。しかし海岸と言っても、コース上から海は見えませんでした。やはりこちらも津波への対策として、海側には防波堤が設けられています。どこまでも続く防波堤を眺めているだけで、起きた被害の大きさを感じ取れました。
レース中に幾度も目にするのが工事現場。作業こそ行われていないものの、重機が配置され、今もなお日々復興に向けた作業が進められていることが分かります。
周囲を見渡しながら走っていると、スタート&ゴール付近には「避難丘」が何ヶ所かありました。看板の先は小高い丘になっており、もし津波が起きた際に逃れるための場所のようです。大きな被害を受けた東日本大震災から約6年半。再びこの地を人々が訪れても、その安全を守れるようにという思いが感じられます。
沿道から寄せられる「ありがとう」の声
コース上のほとんどは更地の状態。そのため、沿道からの応援は多くありません。しかし何ヶ所か民家のあるエリアを通ると、ランナーに向けて地域住民の皆さんから笑顔と声援が飛び交っていました。
私は「頑張って」といった応援に対して「ありがとう」と返しながら走りましたが、そこで印象的だったことが1つ。私が声を返すと、さらに「ありがとう」という声が戻ってくるのです。そのほか、「来てくれてありがとう」「いらっしゃい」とランナーに向けて声をあげる方もたくさん。現地の皆さんにとっては、大勢のランナーがこの地へ訪れたこと自体に感謝の思いがあるのです。その思いを受け止め、熱い気持ちがこみ上げてきました。
さらに沿道には、たくさん「ありがとう」「がんばれ」等と描かれた旗やプレートが。地域全体を通してランナーを歓迎すると共に、盛り上げようという心が伝わってくるようです。そしてその心を受け止め、写真におさめながら走るランナーの姿もたくさん見られました。
「美味い!」がいっぱいのエイドステーション
コース上に設けられたエイドステーションには、水分だけでなく美味しいものがいっぱい。ブドウやりんご、みかんなどのフルーツ、大きなトマト、さらに亘理町の名物「はらこめし」など。実にさまざまな食べ物が提供されていました。
沿岸部ということで、やはり海の幸は絶品! ホタテの浜焼きは、つい立ち止まって堪能してしまいました。ランナーの会話に耳を傾けてみても、ゴール後に「あれは食べた?」「あれが美味しかったな」などと話している方々は多かったようです。
なかなか目にすることのない、東日本大震災の被災地における現状。まだまだ復興は途上の段階ですが、地域住民の皆さんの力強い気持ちを土台としながら、着実に復興作業が進められています。来年、また本大会でこの地を訪れた際には、おそらくまた違った景色が広がっていることでしょう。参加するたびに、復興の進み具合を感じ取ることができる。それは「東日本大震災を忘れない」という面でも、非常に意味のあることではないでしょうか。
もちろんフラットコースは、フルマラソンへの初挑戦、あるいは記録更新を狙うのにも良いでしょう。実際、本大会ではサブ3から完走ペースまでペーサーが配置されていました。これもまた、幅広い層のランナーに参加してもらおうという工夫なのかもしれません。走ることを通じた被災地との関わり、ぜひ来年の予定に入れてみてはいかがでしょうか。
[筆者プロフィール]三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表
【HP】http://www.run-writer.com
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<Text & Photo:三河賢文>
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