海外でのサッカー取材は、ノートとペンだけあれば、事足りるわけではない。ビザが必要な国もある。蹴球放浪家・後藤健生は、そ…
海外でのサッカー取材は、ノートとペンだけあれば、事足りるわけではない。ビザが必要な国もある。蹴球放浪家・後藤健生は、そのビザ取得から「世界のリアル」を学んでいる。
■面倒な手続きで「サッカー談義」
ビザ手続きは面倒なうえに、相手国係員の横柄な態度に怒りを感じることも多いのですが、中東諸国の大使館や領事館には良い印象を持っています。
1997年にはフランス・ワールドカップ予選を取材するのでイランやシリアといった、面倒そうな国にも行きました。
ビザ申請のために大使館員の「面接」というのがありました。
イラン大使館に行ったら、奥の部屋に案内されました。待っていると大使館員が出てきて、入国目的などの質問をします。しかし、目的はサッカーの試合なのです。大使館員ももちろんサッカー好き。しばらく、サッカー談義に花が咲きました。
そして、イランの名物のナッツやレーズンなどを出してくれて、「今の時期だと、どこを見たほうがいいだろう」と観光案内みたいな話もしてくれました。
■世界で「最も」文化的な人たち
シリアは、先日失脚してロシアに亡命したバッシャール・アサド大統領の父親のハフィズ・アサド大統領が支配していた時代です。息子は恐怖政治を敷いて、内戦で多くの国民を殺しましたが、1990年代の父大統領時代は独裁は独裁でも、しっかりと国内を統治していました。
ただ、いずれにしても強権的独裁国家ですから「面接も面倒なのかなぁ」と思っていたら、こちらも大歓迎ムードで、中東式の濃いコーヒーやシリアの菓子類を出してくれて、きわめて丁重な扱いを受けました。
僕は、豊富な資金を湯水のように使って(あ、中東では水は貴重か!)サッカーの世界をかき回し続け、ワールドカップからアジアカップ、ACLまですべての大会の開催権を独占しようとする中東産油国は大嫌いですが、本来、アラブ人は悪い人たちではありません。商人の文化ですから、外来者に対してもかなり寛容です。
政府や企業などのガバナンスが悪く、コネ社会であり、賄賂類が横行しているにしても、個人としては良い人たちだと思います。
まして、イランのペルシャ人というのは、約束をしっかり守る、世界で最も文化的な人たちだと思います。
■中国や韓国に「聞かせたい」セリフ
そういえば、産油国のボス的存在のサウジアラビア大使館にも悪い印象はありません。
2006年の夏に、イビチャ・オシム監督の日本代表がアジアカップ予選のためサウジアラビアに遠征したことがあり、大使館にビザをもらいに行きました。
ところが、領事部の開館時間と申請受付時間を混同してしまって、僕が大使館に着いたときには申請受付が終わっていたのです。
「しょうがない、また来よう」と思ったら、窓口の日本人係員が「せっかく来たのだから、受け付けしてあげますよ」と言うのです。
な、な、なんとご親切な……。中国や韓国の係員に聞かせてやりたいセリフでした。
やはり1997年のアジア予選のときに、カザフスタン戦とウズベキスタン戦の間に1週間あったので、キルギス観光をしようと思って、カザフスタンの首都アルマトイにあるキルギス大使館にビザをもらいに行ったときも、やはりとても親切にしてもらいました。
しかも、在アルマトイ・キルギス大使館は森の中の山小屋風のとても素敵な建物でした……。