■ロスター編成よりも根深い問題か? NBAフェニックス・サンズは、ケビン・デュラント、デビン・ブッカー、ブラッドリー・ビールと…
■ロスター編成よりも根深い問題か?
NBAフェニックス・サンズは、ケビン・デュラント、デビン・ブッカー、ブラッドリー・ビールという豪華メンバーで迎えた今シーズンを11位で終えた。2021年にNBAファイナルに進出したことを考えれば、チームはそこから大きく後退。今夏はデュラントを放出し、フランチャイズプレーヤーのブッカーを中心に、チームの軌道修正に取り組む見込みだ。
しかし、改善はロスターに限らず、球団の内部組織にも必要なようだ。
現地メディア『ESPN』によると、サンズの現職社員が5月14日(現地時間13日)、アリゾナ州連邦地裁にチームを提訴した。訴状の内容は、差別、ハラスメント、報復が主な訴因となっているという。
驚くべきは、サンズが現職または元職員から訴えられる事例は、直近7カ月で今回が4件目ということだ。
この度、球団を相手に訴訟を起こしたのは、2023年1月に入団したジーン・トレイラー氏。同氏はサンズで安全や警備、リスク管理部門のディレクターを務めており、各種安全面はもちろんのこと、財務や評判等のリスク特定にも従事していたという。
■“拳銃やナイフ持ち込み”指摘も報復
トレイラー氏は遡ること2023年、球団に元パートタイム社員が勤務中に4万ドル(約580万円)超のスニーカーやバッグを盗んでいたこと、不満を抱えた人物がチーム幹部とのフォトセッションを妨害したこと、政治系インフルエンサーがWNBAフェニックス・マーキュリーのブリトニー・グライナーに対して空港でハラスメント行為があったことなどを報告。すると、報告に感謝をされるどころか、このプレゼンテーションが原因で降格などの報復を受けたという。また、がんと診断された後に法的に保護されている休暇取得を阻まれたとも訴えている。
訴状では、サンズのセキュリティ面における懸念についても言及された。2023年12月、フェニックス警察の国土防衛局は、サンズの試合中にアリーナでセキュリティ対策の実地試験を実施。その結果、私服警官のうち、2人がナイフを携帯したままアリーナに入場することができた。また、1年後の再試験では、拳銃2丁とナイフ1丁がセキュリティチェックをスルー。そして、2025年2月、リーグが実施したアリーナ監査においてサンズは失格を言い渡されという。トレイラー氏は球団の安全面における懸念を浮き彫りにした。
これに対して、サンズは「業界標準として定期的に行っており、安全は最優先事項で、期待を上回る基準を満たしています。監査に落ちた事実はありません」と、訴状に記載された内容を否定している。
■内部問題が明るみとなった事件
サンズの内部問題は、元球団オーナーの“ロバート・サーバー事件”に端を発する。2021年、サーバー氏は17年間にわたる職場内の人種差別、女性蔑視、パワハラ疑惑が広く報じられた。差別表現の使用、女性の身体や妊娠に関する低俗な発言、わいせつ行為、従業員への恫喝など、醜態が次々に暴かれると、NBAは独立調査を開始。調査の結果、これらの行為が確認され、リーグは1年間の職務停止と史上最高額となる1000万ドル(約14億5000万円)の罰金を科した。
無数の風評被害やスポンサー離れを受けて、サーバー氏はサンズのオーナーを降り、現オーナーのマット・イシュビア氏に球団を売却。イシュビア氏は当時「ベストな職場文化を作る」と社員に誓っていた。
しかし、サンズは3年間での職場改善義務が課せられたにもかかわらず、今なお内部では訴訟が相次いでいる。直近7カ月の他3件は、それぞれ違う者からの訴えであり、内容はハラスメント、人種および性差別、報復、不当解雇、残業代不払いなどであるため、職場環境が改善されたとは言い難い。さらに、現在は削除されているものの、今年4月にも社員のビセンテ・ゴンザレス氏が、ビジネス特化型SNSのLinkedInで組織の問題を告発しており、内部には相当数のストレスが残されていると推測される。
■告発されたクラブの声明
これらの報道について、サンズ側は訴えを否定。同時に、これらの訴訟を担当するシェリー・ライト弁護士についても非難した。
「共通項は、ライト弁護士です。恐喝を試みています。ライト氏と依頼人は荒唐無稽で、妄想的な主張をしています。旧経営体制下の文化には大きな課題がありましたが、イシュビアのリーダーシップのもと新しい文化へと刷新してきました。リーグのコンプライアンス要件は完全に満たしています」
コート内外で問題多発のサンズ。選手たちが本領を発揮して目標のリーグ優勝を成し遂げるためには、デュラントのトレード以前に、バックオフィスの環境改善に着手するべきなのかもしれない。
文=Meiji
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