5月11日に行われたJ1第16節の鹿島アントラーズと川崎フロンターレの一戦は、「国立決戦」と呼ぶのにふさわしいものだった。首位チームとかつての絶対王者が、6万人近い観客の前で激突。2チームの明暗を分けたものは何か。サッカージャーナリスト後…

 5月11日に行われたJ1第16節の鹿島アントラーズと川崎フロンターレの一戦は、「国立決戦」と呼ぶのにふさわしいものだった。首位チームとかつての絶対王者が、6万人近い観客の前で激突。2チームの明暗を分けたものは何か。サッカージャーナリスト後藤健生が検証する。

■疲労の影響を「否定」も…

 川崎フロンターレにとって、ACLE決勝大会の激闘から中5日での試合である。

 長谷部茂利監督は試合後の記者会見でACLEによる疲労の影響は否定し、むしろ気温に対する順応ができなかったと語った。公式記録によれば、気象条件は気温25.9度、湿度45%。真夏の暑さに比べれば低い数字だが、体が暑さに慣れていない時期でもあり、選手のコンディションに与える影響は大きい。

 だが、川崎は気温が30度をはるかに越えるジッダで戦った後だったのだ。ずっと国内で過ごしていたチームと比べれば、暑さ対策は進んでいたはずだ。やはり、ACLEでの疲労によって、暑さが選手たちに与える影響を拡大したと見るべきだろう。

 一方、鹿島アントラーズにとって、この日の川崎戦は4月25日の第12節、名古屋グランパス戦から週2試合のペースでの5連戦目だった(そして、この連戦を5連勝で終えた)。

 4月末から5月はじめにかけての大型連休は、スポーツクラブにとってはかき入れどきだ。冬の寒さから解放され、過ごしやすい気候の中で観客動員が見込まれる。そこで、休日を生かして連戦が行われるのだ。

 プロとして当然のことではある。

 だが、気温の変化も激しく、この時期の連戦は、選手にとっては厳しいものになる。

 相手にとっても同じような条件だから、どちらに有利、どちらに不利と言うことはできないが(運動量に依存したスタイルのチームには不利)、ただ疲労がたまった中での試合となれば、運動量は落ちるし、キックの精度も悪くなる。ちょっとしたミスも増える。

 そんなこんなで、連休明けのゲームは攻撃側の精度が落ちて決定機が作れなくなるし、逆に守備にミスが出て失点が増える場合もある。

 また、疲労した中で無理しながらプレーすることで、負傷のリスクも高くなる。鹿島対川崎の試合でも、レオ・セアラだけでなく、負傷したり、痙攣を起こす選手は多く、そのためVARの介入もなかったのに、後半のアディショナルタイムは10分40秒に及んだ。

■試される「チームの底力」

 他のカードで同様の傾向はあった。

 連休明けの時期が終われば、中5日とか、中6日といった通常の試合間隔になるので、できるだけフレッシュなコンディションで、プレーのレベルを上げていってもらいたいものだ。そして、6月に入ると代表ウィークでリーグ戦が中断期間に入り、選手たちは一息つくことができる。

 もっとも、ACLE決勝大会でサウジアラビアに遠征していた川崎と横浜F・マリノスは未消化分の試合をこなさなければならないので、週2試合の連戦がもうしばらく続くし、クラブ・ワールドカップを控えている浦和レッズも、しばらくは前倒し分の試合が続くことになる。

 寒い中で2月に始まったJリーグも全日程の約3分の1が終了。そして、7月にはE-1選手権(東アジア選手権)が終わると7月も後半。猛暑の中のゲームが続くことになる。昨年のように豪雨や雷雨の影響をこうむることもあるだろう。こうして、チームに疲労の色が濃くなってくれば、そこでチームの底力が試されることになる。

 控え選手の層の厚さとそのレベルの高さ。試合運びの負担が大きいスタイルなのか、それとも負担が小さくて済むのか……。

■構築した「鹿島らしさ」

 9か月という長い期間をかけて戦うリーグ戦では、そうしたクラブの底力が試されるのだ。幸か不幸か、今年のJ1リーグは未曽有の大混戦。2連勝、3連勝したら順位は一気に上がるし、連敗をしたら転落してしまう。逆に言えば、現段階で下位に低迷しているチームでも、何かのきっかけで連勝を重ねたら、巻き返しのチャンスは十分にある。

 暑さ寒さなど、さまざまな気象条件の中で、数多くの試合を消化するJ1リーグ戦。最後まで戦い抜くのは厳しい作業になるだろう。だが、サポーターはそれが魅力と思っている。各選手には、ケガなどないように、最後までプレーできることをお祈りしている。

 鬼木監督は、「古巣との対戦でも試合中はいつもと変わらなかった。変な感情なしにできた」と語ったが、監督就任から短期間の間に、いかにも鹿島らしい勝負強いチームを作ったものだ。古巣相手に、前半劣勢の中でもしっかりと逆転勝利することで、そのことを証明する試合だった。

 そんな鬼木監督を見ていて、僕は昨年11月に川崎の監督として等々力で鹿島と対戦したとき(3対1で鹿島勝利)に、リードした後で鹿島がうまく時計の針を進ませながら勝利を手繰り寄せたことを「鹿島らしい勝ち方」と語っていたことを思い出した。

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