5月11日に行われたJ1第16節の鹿島アントラーズと川崎フロンターレの一戦は、「国立決戦」と呼ぶのにふさわしいものだった。首位チームとかつての絶対王者が、6万人近い観客の前で激突。2チームの明暗を分けたものは何か。サッカージャーナリスト後…

 5月11日に行われたJ1第16節の鹿島アントラーズと川崎フロンターレの一戦は、「国立決戦」と呼ぶのにふさわしいものだった。首位チームとかつての絶対王者が、6万人近い観客の前で激突。2チームの明暗を分けたものは何か。サッカージャーナリスト後藤健生が検証する。

■何度か見られた「判断ミス」

 そして、川崎フロンターレが追加点を奪えずにいる間に、次第に鹿島アントラーズも盛り返し、ロングカウンターの形で攻撃の機会を増やしていった。

 29分には、中盤に下がったレオ・セアラが鈴木優磨からのパスを受けようとした瞬間、高い位置に上がっていた高井幸大がチャレンジしたものの、レオ・セアラにワンタッチで逆を取られてしまう。そのまま持ち込んだレオ・セアラは、飛び出してきたGKの山口瑠伊もかわして無人のゴールに向けてシュートを放ったが、バランスを崩してシュートは枠を大きく外れてしまった。

 川崎のDF高井は、ACLE決勝大会のアル・ナスル戦ではクリスティアーノ・ロナウドとマッチアップ。ヘディングシュートを許す場面もあったものの、ほぼ互角に渡り合って評価をさらに高めたばかりだ。将来の日本代表の守備陣を背負って立つべき選手だ。

 高井の魅力は、守備だけでなくパスの能力やボールを相手陣内まで持ち出すドリブルなど攻撃面にもある。実際、鹿島戦の前半でも、高井が持ち出したところから生まれたチャンスもあった。

 だが、この日の高井はレオ・セアラに逆を取られた40分の場面だけでなく、前半のうちから積極的に前で仕掛けるべきか、引いて構えるべきかといった点で小さな判断ミスが何度か見られた。

■勝敗を分けた「アクシデント」

 そして、川崎が1点リードしたまま迎えた前半のアディショナルタイムに、鹿島に同点ゴールが生まれた。右から左サイドバックの安西幸輝にサイドチェンジのパスが渡り、安西がそこから右サイドに深いパスを送る。そこに飛びこんできた鈴木が折り返したところに舩橋佑が合わせた。

 安西からのボールに川崎のGK山口が反応したものの、鈴木の折り返しを防げなかった。鹿島が大きなサイドチェンジを繰り返すことによって山口の判断ミスを誘った形だった。

 こうして、ゲームは1対1のまま後半に入ったが、その後はどちらも完全にゲームを支配することができないまま、時計の針が進んでいった。

 後半も立ち上がりは川崎がやや優勢で、51分には左から佐々木旭がドリブルで持ち込んでそのままシュートを撃ち、53分には右サイドに出たエリソンからのクロスに再び佐々木が合わせたが決められない。

 61分、鹿島のレオ・セアラが痙攣を起こしてピッチに座り込んでしまい、鹿島は急遽、田川亨介と交代を余儀なくされる(交代は62分)。だが、田川は交代からわずか3分で、その持ち味であるスピードを生かして決勝ゴールを決めることになる。

■落ちてしまった「パスの精度」

 ハーフウェーライン付近で短いパスを交換した後、鈴木が前線で田川の走るべきラインを見いだして縦パスを送り込み、田川も同じイメージを持って走り込んでおり、相手DFを置き去りにしてゴール左に蹴り込んだ。

 鈴木は、川崎の守備陣に穴を見いだしていたようだが、その鈴木の目と田川のスピードが連係した得点だった。

 川崎のCBはジェジエウが故障がちで、最近は高井と丸山祐市が組むことが多い。丸山はどっしりと構えて堅実に跳ね返すことに専念し、高井は前後に動いて攻撃の起点にもなろうとする。ところが、前半からそうであったように、鹿島戦での高井は判断に迷いがあるように見えた。そのため、CB2人の間、あるいはCBとボランチの間にスペースやギャップができてしまった。そして、そこを鈴木が見事に使った。

 リードされた川崎は、反撃に移り、その後はほとんどの時間、鹿島サイドでゲームは進み、76分には山田新や家長昭博、神田奏真、さらに87分には橘田健人も投入された。

 たしかに惜しいシュートは何本もあった。87分には山本悠樹の蹴った左CKを高井が頭で決めたが、その前に攻撃側のファウルがあって、得点は認められない。アディショナルタイムに入った90+3分にも、左からのクロスに山田が頭で合わせたが、シュートはGKの早川友基の正面に飛んでしまった。

 ただ、リードされた後の川崎の攻撃は、焦りのせいなのか、疲労のせいなのか、パスの精度も落ちていた。

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