5月11日に行われたJ1第16節の鹿島アントラーズと川崎フロンターレの一戦は、「国立決戦」と呼ぶのにふさわしいものだった。首位チームとかつての絶対王者が、6万人近い観客の前で激突。2チームの明暗を分けたものは何か。サッカージャーナリスト後…

 5月11日に行われたJ1第16節の鹿島アントラーズ川崎フロンターレの一戦は、「国立決戦」と呼ぶのにふさわしいものだった。首位チームとかつての絶対王者が、6万人近い観客の前で激突。2チームの明暗を分けたものは何か。サッカージャーナリスト後藤健生が検証する。

■今シーズン「最多」の入場者数を記録

 J1リーグ第16節の鹿島アントラーズ対川崎フロンターレの試合は、東京・国立競技場に5万9574人を集めて行われた。毎回、招待客を含めて多くの観客が入る「THE国立DAY」の中でも、今シーズン最多の入場者数だった。

 それもそのはず、J1リーグで首位を走る好調鹿島とかつての絶対王者、川崎との好カードだった。

 川崎はJ1リーグでは前節終了時点で15位と出遅れていたが、これはAFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)決勝大会出場の関係で、他クラブに比べて3試合ほど消化試合数が少ないためでもある。ACLEでは世界的ビッグネームが名を連ねるサウジアラビアの金満クラブ相手に一歩も引かぬ戦いを繰り広げて、準優勝という結果をつかみ取った川崎。J1リーグでもいずれ順位を上げてくるのは間違いなく、鹿島戦はJリーグきっての好カードと言って間違いなかった。

 そして、昨年まで川崎を率いて黄金時代を築き上げた鬼木達監督が鹿島を率いて古巣と対戦するという意味での興味も大きかった。多くの観客が集まって当然だ。

 ちなみに、両チームのカップ戦を含む過去の対戦成績では川崎の28勝、鹿島の22勝(10引き分け)と川崎が勝ち越していた。とくに川崎が初優勝を遂げた2017年以降は3ゴール以上を決めて勝利する試合も多く、鹿島にとって川崎はまさに難敵の一つ。鬼木監督が鹿島に移ったことで、その辺りの流れがどう変わるのかも注目点だった。

■「ついていけなかった」出足とスピード

 試合はキックオフ直後に鹿島の鈴木優磨、そして3分に川崎のエリソンと両チームのエースがミドルシュートを撃ち合って始まった。そして、6分には河原創のサイドチェンジから右CKを獲得した川崎が先制に成功する。山本悠樹のキックをニアに走り込んだ佐々木旭がうまく頭で合わせてコースを変えた(得点は7分)。

 そして、その後も川崎が何度もチャンスを作った。

 10分には、鹿島のCKからカウンターを発動。ACLE決勝大会から好調を持続している伊藤達哉がドリブルで持ち込んで、左から走り込んだマルシーニョに合わせたが、マルシーニョのシュートはGKの早川友基が防いでCK。16分には左サイド深い位置でボールを奪った川崎。最後は、このところ進境著しい大関友翔が持ち込んでシュートを放つが、これはわずかに右にはずれる。

 高い位置からプレスをかけてボールを奪い、奪ったボールをドリブルまたはロングレンジのパスを使って素早く相手陣内に持ち込み、アタッキングサードでは川崎らしいパスワークで崩す……。川崎の攻撃がいかに機能していたかは、前半だけで9本のCKが記録されたことでも分かる。

 鹿島の鬼木監督は「出足やスピードについていけなかった」と、前半を振り返った。

■少なかった「枠内シュート」の回数

 だが、川崎は順調に攻撃が機能していた前半のうちに2点目を奪うことができなかった。

 もちろん、サッカーの試合でゴールが入るか入らないかは運、不運によるところも大きいが、川崎はあれだけ攻撃の機会が多かったにもかかわらず、枠内にシュートを飛ばした回数そのものが少なかった。

 アタッキングサードでパスを回すところまでは人数をかけてうまく組み立てたのだが、クロスやラストパスに絡んでいく選手の数が足りなかったような気がする。

 たとえば、前半の終盤の40分に左サイドでパスを交換した後、最後は大関のスルーパスに佐々木が反応して深い位置、いわゆる「ポケット」を取った。しかし、佐々木のマイナスのクロスに誰も合わせることができず、鹿島のDFがCKに逃れた場面があった。

 左サイドで攻撃を作っている時間に、右サイドから複数の選手が入っていなければいけなかったのではないだろうか。

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