■2回2死二、三塁の好機に先制中越え2点二塁打「振ったら当たった」 東京六大学野球春季リーグは11日、立大が明大2回戦に13-6で勝利。これまで今季6戦5勝1分無敗だった明大に土をつけ、1勝1敗のタイに持ち込んだ。明大から勝ち点を奪うことが…

■2回2死二、三塁の好機に先制中越え2点二塁打「振ったら当たった」

 東京六大学野球春季リーグは11日、立大が明大2回戦に13-6で勝利。これまで今季6戦5勝1分無敗だった明大に土をつけ、1勝1敗のタイに持ち込んだ。明大から勝ち点を奪うことができれば、2017年春以来8年ぶりの優勝が俄然現実味を帯びることになる。

 勝利を引き寄せたのは、成長著しい2年生左腕だった。先発した田中優飛投手は、まず打撃で貴重な働きをした。2回の攻撃で無死二、三塁の先制機を迎えたが、7番、8番が連続三振に倒れ、チャンスはしぼみかけていた。ところが、ここで打席に入った「9番・投手」の田中が意外性を発揮する。カウント1-1から、真ん中高めに来た146キロのストレートを叩くと、打球は前進守備の中堅手の頭上を軽々と超えていった。

 田中のリーグ戦初安打が先制2点二塁打となり、本人は「打撃はあんまり(得意ではない)です。2球目が149キロを計測して、とても打てるとは思えなかったのですが、とりあえず真っすぐだけを狙い、振ったら当たりました。普段は打てないので、不思議な感じでした」と大いに照れた。

 投げてはその裏、1死満塁のピンチを招き、8番打者を遊飛に打ち取ったものの、遊撃手が本塁へ背中を向けてキャッチした隙をつかれ、三塁走者にタッチアップからホームインを許した。それでも、4回2死二、三塁のピンチでは後続を断って点を許さず。5回1死二、三塁でも、相手の3番打者を空振り三振、4番も投ゴロに仕留めた。

「データを見て、外のスライダーと内の真っすぐをしっかり投げられれば抑えられると、自信を持って臨みました」と明かした通り、左打者の多い明大打線には、インコースに速球を見せた上で、アウトコースのスライダーを振らせる投球が効果的だった。

明大2回戦・投打で活躍した立大の田中優飛【写真:加治屋友輝】

■監督は「よく投げて、打ってくれた」と称賛、自己最多94球の粘投

 一方、味方打線は4回、押し出し四球、鈴木唯斗外野手(4年)の満塁弾などで一挙7得点。田中は8点リードの6回、2点を返されたところで、1死三塁のピンチを残しマウンドを降りた。救援投手がタイムリーを浴びたため、この日の田中の成績は5回1/3、4失点(3自責点)。投球数「94」はリーグ戦自己最多だった。「疲れはなかったのですが、点を取られてはいけないと力で抑え込もうと思い、制球がばらついてしまいました」と反省を口にしたが、木村泰雄監督は「よく投げてくれて、よく打ってくれました」と称えた。

 立大の先発投手は昨年、小畠一心投手(4年)の“1枚看板”だったが、今季は田中が法大2回戦で6回1安打9奪三振無失点の快投を演じるなど、2回戦を担う投手として安定感を増し、それがチームの好調につながっている。

 田中は宮城・仙台育英高3年の時、春の選抜大会では背番号「18」を付けて8強入り、夏の甲子園大会では「11」に昇格し準優勝に貢献。ただ、チームメートの高橋煌稀投手(早大)、湯田統真投手(明大)、仁田陽翔投手(立正大)の“150キロトリオ”の陰に隠れた存在だった。

 しかし高校野球を引退後、立大1年の春を迎えるまでの間に、徹底的なウエートトレーニングに取り組み、最高球速を140キロ前半から150キロまで上げた。大学ではこれまで“仙台育英4人衆”の中で出世頭といえる活躍を見せている。

「他の3人とは今も頻繁に連絡を取っています。自分は投げさせてもらえる機会が多いので目立っていますが、レベルは彼らの方が上だと思っています。これから3人を追いかけて、レベルアップしていきたいです」。田中は油断することなく、今のうちに実績を積み上げ、実力をつけていく構えである。

 11日現在、優勝争いは4チームが勝ち点「2」で並び、勝率で明大がトップ。もし立大が明大から勝ち点を奪って「3」とすれば、8年ぶりのVが見えてくる状況だ。好機到来。勝負の3回戦へ向け、田中は2年生ながら、「投げる機会をいただけるなら、しっかり調整します」と連投も辞さない覚悟を強調した。