サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニ…

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は「ピッチの風見鶏」について。

■旗は「Jリーグ指定」のもの

 Jリーグでは、「スタジアム基準」という規則を設けてさまざまな施設や用具の規定をしている。その「Ⅱの4」に「コーナーフラッグ」という項目があり、「Jリーグ指定のものであること」とある。

「コーナーフラッグ」というと、旗だけでなく、それを支える「コーナーフラッグポスト(いわゆる旗竿)」も含めて語られることもあるが、Jリーグ規定では「フラッグポスト」については「Ⅱの5」に分けて規定があるので、「Ⅱの4」は明らかに「旗」のことで、実際には白地にJリーグのマークをプリントした四角形のものを、全試合会場で使用している。

 だが、話の持っていき方次第では、白地でJリーグマークをつけたまま、三角形にすることは可能なのではないだろうか。であれば、ヴァンフォーレ甲府ほど、その先鞭(せんべん)をつけるのにふさわしいクラブはないと、私は確信するのである。

■J1勢を「5試合連続」で撃破

 ヴァンフォーレ甲府は1965年誕生の「甲府クラブ」が1999年にプロ化した、創立60年の歴史を誇る「還暦クラブ」である。「ヴァンフォーレ」はフランス語で「風」と「林」を意味し、「はやきこと風のごとく、しずかなること林のごとく、侵掠すること火のごとく、動かざること山のごとし」という戦国武将・武田信玄の旗印の言葉をモチーフにしていることはよく知られている。

「甲府クラブ」時代から大企業をバックにしたチームではなく、地域に支えられたクラブチームだった。日本サッカーリーグ時代には2部から昇格することはなく、1999年に加盟したJリーグでも、以後27シーズンのうちJ1でプレーしたのはわずか8シーズン。19シーズンをJ2で過ごしてきた。だが、吉田達磨監督の下、2022年度の天皇杯全日本選手権ではJ1勢を5試合連続で倒して見事優勝を飾ったのである。J2クラブの天皇杯優勝は、2011年度のFC東京に次いで2回目だった。

■初の「ノックアウトステージ」

 甲府は天皇杯優勝チームの権利で2023/24シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)に出場、ホームのJITリサイクルインクスタジアムがACL基準に適合せずに使うことができず、東京の国立競技場をホームせざるをえないという状況のなか、他クラブのサポーターの声援も受けてグループステージH組を首位で突破するという快挙を成し遂げた。ACL史上、2部リーグのクラブのノックアウトステージ進出は初めてのことだった。ラウンド16で韓国の競合・蔚山現代FCに屈したが、甲府の奮闘は大きな称賛を浴びた。

 しかし、天皇杯優勝で日本中を沸かせた2022年、J2では11位に終わって目標としてきた「J1昇格」を逃し、吉田監督は解任、後を引き継いだ篠田善之監督も2023年のJ2では8位、2024年はACLをラウンド16まで戦い抜いた後にシーズンなかばで大塚真司監督に交代した。そして今季もなかなか白星が続かず、J2の第13節終了時点で16位と苦しんでいる。

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